2014 Fiscal Year Research-status Report
有茎腸管グラフト内肝組織片・肝幹細胞共充填による体内型補助肝臓の作成
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25670568
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
小暮 公孝 群馬大学, 生体調節研究所, 研究員 (20125850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 至 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (60143492)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 体内型補助肝臓 / 有茎腸管グラフト / 肝幹様細胞 / 肝組織幹様細胞共充填 / 肝不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は肝の体性幹様細胞を機能肝細胞に効率よく分化誘導する方法の開発を目指している。そのために体内型補助肝臓(有茎腸管グラフト内肝組織片充填移植術)を用いる。ここではグラフト内に充填されたミンチされた肝組織片は急速に再癒合し増殖する。体積で元より8-10倍に急速に増殖肥大することを確認している。この充填肝組織の急速な増殖環境下に肝の幹様細胞を置くことで様々な増殖因子の影響により肝の幹様細胞が機能肝細胞に分化誘導してゆくことを期待している。我々はこれまでに腸管グラフト内肝組織片充填術の基本術式に様々な改良(グラフを大網で包んで後腹膜に固定しグラフトの捻転を防止すると共に血流を付加する、大網と肝組織片をグラフト内に共充填し大網血流を利用して血流付加をはかる、部分肝切後の肝離断端に小孔を開けた腸管グラフトを逢着し充填肝組織内に門脈血流を導く)を加えることにより従来法(単純な有茎腸管グラフトのみ)では完全に壊死に陥ってしまった90日後まで充填肝組織の一部を遺残させることが出来た。一方、肝の幹細胞システムが解明されたなら肝の幹細胞から機能肝細胞を大量に増殖させ肝臓を再構築することも可能になる。100年以上前から齧歯類の肝臓には長期生存する上皮性細胞の存在が知られていた。その代表例が肝の幹様細胞と言われるWB-F344細胞である。この幹様細胞は様々な細胞に分化誘導出来ることが知られている。我々はWistar rat肝から独自にこの幹様細胞を単離しクローン化している。本研究では有茎腸管グラフト内にこの幹様細胞をミンチした肝組織片ともに共充填し、肝組織片が急速に癒合し増殖する環境下でこの幹様細胞を機能肝細胞に分化誘導することで、効率的な体内型人工肝臓の作成を目指す。平成26年度には肝組織と共充填した肝幹様細胞が壊死することなく60日間グラフト内に生着し増殖していることを確認できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.有茎腸管グラフトにミンチした肝組織を充填すると充填肝組織は再癒合し急速に増殖増大する。研究実績の概要で述べたように様々な工夫を行い、充填肝組織の長期生着と母体側の肝組織との癒合をはかり、本来の肝の血流システムとの結合を図ってきた。 2.我々はこれまでに、独自に、肝の幹様細胞を単離しクローン化してきている。この幹様細胞に対して幹細胞に特異的なマーカーといわれている(C-Met, c-Kit, CS45R, CD34, Thy1)に関して免疫組織学的に検討した。その結果はC-Met+, c-Kit-, CD45R+, CD34-, Thy1+であった。なかでも幹細胞に特異的と言われるC-Met+, c-Kit-の組み合わせが認められたことは、我々が単離したこの細胞が幹細胞の性格を有していることを意味する。 3.この腸管グラフトにミンチした肝組織とともに肝の幹様細胞を共充填することは肝幹様細胞が、肝組織が再癒合し急速に増殖増大する環境下に門脈血の影響を受けながら置かれることを意味する。このような環境下では肝の幹様細胞が機能肝細胞に分化誘導してゆくことが期待される。 4.上記目的を果たすために凍結保存しておいた肝幹様細胞を解凍し、これを増殖させた後、分散し、その全量をミンチした肝組織と混和し、グラフト内に充填した。その結果、肝組織と共充填した肝幹様細胞は60日後でも遺残肝組織の間や腸管グラフトの壁近傍に生着し増殖していることが確認できた。対照として同量の肝幹様細胞を鼠径部脂肪織内に注入したが褐色脂肪組織の増生は認めたものの肝幹様細胞の生着は全く認めなかった。 5.しかし、一昨年から昨年にかけての本学動物実験施設の改修工事により腸管グラフト内にミンチした肝組織と肝幹様細胞を共充填する実験を充分な数行うことができていない。これが、「進行がやや遅れている」理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本学の動物実験施設の改修が終了し、施設が再開されたので、腸管グラフトにミンチした肝組織片と肝幹様細胞を共充填する実験に着手することができている。実際、ミンチした肝組織片に肝幹様細胞を混和して腸管グラフトに充填してみたが、生体の他部位では長期間生着できないとされている肝幹様細胞が60日後でも充填肝組織の間やグラフトの腸管壁の近傍に生着し増殖しているのが確認できた。ちなみに、対照として鼠径部の脂肪組織内に注入してみたがその生着は全く認められなかった。また、PAS染色では正常肝細胞ほどに染まってこず肝幹様細胞ではグリコーゲンの蓄積は小さいように思える。今後、実験例を増やして研究目的の肝幹様細胞の肝細胞化について検討をしてゆく。
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Causes of Carryover |
平成26年度にはラット腸管グラフトにミンチした肝組織片と肝幹様細胞を共充填して、幹様細胞の変化する態様の検討を行う予定であったが、動物実験施設の改修工事が平成25年9月から平成26年9月まで続き、この間、動物実験を行うことができなかった。そのため、計画を変更し、平成26年10月から実験を再開したが、まだ症例数が不足していて、十分な症例数に達した段階で解析を行うこととしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、更に、腸管グラフト内にミンチした肝組織片とともに肝幹様細胞を共充填し、肝組織の急速な増殖環境下で、しかも、門脈血の影響下で共充填した肝幹様細胞がどのような態様を呈するか、細胞をGFPあるいはPKH26 Red Fluorescent Linkerで標識し、組織学的に検討する予定であり、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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Research Products
(2 results)