2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25670575
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田浦 康二朗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80378629)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 慢性膵炎 / 膵線維化 / 膵星細胞 / 肝星細胞 / ビタミンA / コラーゲン |
Research Abstract |
本研究は、膵臓の線維化の進展において線維(主にコラーゲン)産生細胞の起源を探求することを目的とし、コラーゲンα1タイプ1プロモータ下にGFPを発現するトランスジェニックマウス(Coll GFPマウス)を使用し実験を行った。 Coll GFPマウスにセルレインを反復投与することで膵臓に著明な線維化が作成でき、蛍光顕微鏡での観察により、線維隔壁に沿ってGFP陽性細胞が存在することが判った。これらのGFP陽性領域は、活性化膵星細胞のマーカーでもあるαSMAにも陽性であることが示された。 In vitro実験として、濃度勾配遠心による膵からの細胞分離を行った。分離された非実質細胞中には、細胞質内にOil Red O陽性となる脂肪滴を持った細胞が認められたが、これらの脂肪滴含有細胞は、星細胞の特徴であるビタミンAの自家蛍光を持たなかった。この非実質細胞はGFP陽性細胞を多く含み、1週間程培養を行うと、筋繊維芽細胞様に細胞質の突起を伸ばし脂肪滴を失った。また肝臓同様に小型で球形のGFP陽性細胞も認められた。これらの突起を伸ばす細胞は、αSMA、GFAPにも陽性であったことから活性化膵星細胞であると考えられた。タイムラプススタディによる観察では、これらの形態の異なる細胞は互換性のない別個の細胞であると考えられた。 金コロイド抗体法を用いた免疫電顕による観察では、膵組織中のGFP陽性で脂肪滴を含有する細胞を同定し得たが、これらは同様に観察した肝星細胞に比し、その脂肪滴は非常に小さく少ないものであった。膵非実質細胞では肝星細胞に比べ、レチノールのエステル化に必須のLratの発現が非常に低いことが判った。 ここまでの研究から、肝星細胞の膵カウンターパートとされる膵星細胞の、肝星細胞とは大きく異なる特徴が明らかとなり、また膵星細胞以外にも線維を産生する細胞の存在が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究開始時の研究計画の記載通り、Coll GFPマウスを用いて膵線維化に関する研究をin vivo、in vitroである程度まで進めることが出来た。一般的に膵線維芽細胞の起源は膵星細胞とされているが、昨年度に行った我々の実験においては、膵星細胞は既報通りの細胞ではない可能性が示唆された。また膵星細胞以外のGFP陽性(=コラーゲン産生)細胞の存在も明らかとなってきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの我々の研究で明らかになったGFP陽性細胞及び膵星細胞の特徴について、更なる追求を行う。 そのため当初の研究計画通り、FACSによるGFP陽性細胞の解析とソーティングを行う。前方散乱光(FSC)、側方散乱光(SSC)の値や表面抗原マーカーの発現を基に亜集団へのグループ分けを試みる。また、肝臓においては紫外線レーザーによる星細胞の分離が行われているため、これを膵臓でも試みる予定である。しかし、これまでの我々の実験結果では膵星細胞は自家蛍光を持たず、そのため紫外線レーザーでは膵非実質細胞はグループ分けされない可能性もある。その場合は、レーザーマイクロダイセクションを用い形態の異なるGFP陽性細胞を分け、各々において培養、タイムラプス観察等を行う予定である。また特定の細胞集団へのグループ分けが可能となれば、mRNAを抽出し、マイクロアレイによる遺伝子発現パターンの解析を行うことができる。これにより膵星細胞と肝星細胞の違いや、既知の細胞とは異なる細胞集団の存在を追求する。 また、これまでの我々の研究において、膵星細胞は肝星細胞と異なりビタミンAを持たない、もしくは非常に含有量が少ないという可能性が示唆された。これを明らかにするため、各々の細胞において液体クロマトグラフ質量分析計によるレチニルパルミテートの検出を試みる。 以上、当初の研究計画概要に変更はない。
|
Research Products
(9 results)