2013 Fiscal Year Research-status Report
オートタキシン阻害によって肺移植後の閉塞性細気管支炎の抑制を目指した基礎研究
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25670604
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丹藤 由希子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 産学官連携研究員 (70596212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 丘 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (10195901)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 移植 / 免疫学 / オートタキシン / 閉塞性細気管支炎 / モデルマウス |
Research Abstract |
肺移植は末期肺疾患を救う治療法として増加する一方、移植後の予後は非常に悪く、その原因の大半が閉塞性細気管支炎の発症によるものである。しかしながら、その発生機序には不明な点が多く、効果的な予防・治療法が存在しない。本研究では、閉塞性細気管支炎に対するリゾリン脂質(LPA)合成酵素オートタキシン (ATX) の創薬ターゲットとしての有用性を明らかにすることを目的とした。 平成25年度は(1)ATX阻害による閉塞性細気管支炎の発症抑制効果の検討、(2)肺移植後の閉塞性細気管支炎とATXの関連性の検討を実施項目とした。 (1)については、異系統のマウスの気管を背部の皮下に移植する閉塞性細気管支炎の動物モデルマウスであるheterotopic tracheal transplantationマウスに、ATX阻害抗体を投与した実験群とvehicleを投与する対照群からなる実験系で、気管閉塞の程度を比較した。組織学的な評価方法で比較した結果、移植10日目の組織において両者の間に変化はなかった。また、血中のATX濃度を移植後2日おきに測定した結果、移植10日目までに両者の間に変化はなかった。一方、6種類あるLPA受容体のうち、1型および3型LPA受容体のアンタゴニストを投与した群は、vehicle投与群に比べて組織評価の項目である気道上皮の脱落が抑えられた。ATXの阻害とLPA受容体の阻害で結果に違いが見られたことについては、ATX阻害抗体が組織に浸透せず、局所的なATXの活性が抑制できなかった可能性が考えられた。 (2)については、今年度は肺移植後の患者の臨床検体の収集を行っているが、本年度は移植の件数が少なく、検体を入手することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施項目(1)ATX阻害による閉塞性細気管支炎の発症抑制効果の検討については、ATX阻害抗体ではheterotopic tracheal transplantationマウスの組織評価に変化はなかった。しかしながら、当初次年度の実施予定であったLPA受容体の阻害剤により気道閉塞の抑制効果が見られた。本実験によって、本マウスモデルにおけるLPAの関与が示されただけでなく、1型もしくは3型LPA受容体が関与していることまでを明らかにすることができた。また、そのLPAの由来が血中のATXではなく、組織内に局所的に存在するATXによるものである可能性も示唆され、本項目の検討課題は達成できたと考える。 実施項目(2)肺移植後の閉塞性細気管支炎とATXの関連性の検討については、本年度の検体が手に入らなかったことから研究の進捗はなかった。しかしながら、実施項目(1)の進捗が次年度の項目も部分的に達成しているため、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ATX阻害抗体の投与によりheterotopic tracheal transplantationマウスの気道閉塞が改善されなかった。また、阻害抗体に替わるATX阻害剤の入手も困難な状況である。さらに、組織中のATX陽性細胞をフローサイトメトリーで分離する計画をしていたが、現在出回っている抗ATX抗体の特異性には問題があり、次年度において本計画の遂行は困難といえる。一方、1型および3型LPA受容体の投与によって同モデルの気道閉塞が抑制され、本病態におけるLPAの関与を明らかにすることができた。したがって、今後の研究の進展、創薬ターゲットとしての有用性という点から、今後の解析ターゲットを主にLPA受容体にすることとし、当初予定していた次年度の実施項目に多少変更を加え、研究を推進していく。 具体的には、6種類のLPA受容体ノックアウトマウスを用いた実験は、候補が絞られた1型または3型LPA受容体ノックアウトマウスに限って実施する。また、LPA受容体アンタゴニストにより抑制された上皮の脱落のメカニズムを明らかにするため、気道上皮細胞株にLPA受容体アンタゴニストを作用させ、その変化およびシグナル系の解明を目指す。 臨床データを用いた肺移植後の閉塞性細気管支炎とATX の関連性の検討については、引き続き検体を収集し、研究を進める。
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Research Products
(1 results)