2013 Fiscal Year Research-status Report
抗体陽性・血液型不適合肺移植を目指すための、抗体関連拒絶に対する研究
Project/Area Number |
25670607
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
陳 豊史 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00452334)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊達 洋至 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60252962)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 肺移植 / 抗体関連拒絶 / ドナー特異的抗体 / 免疫抑制 |
Research Abstract |
脳死ドナー不足のため、本邦では生体肺移植の占める役割が大きいが、血液型不適合やドナー特異的抗体(DSA)陽性により実現できないことも多い。従って、腎臓や肝臓移植にならい、血液型不適合やDSA陽性症例での生体肺移植の実現を目指した研究が急務である。近年、肺移植後のDSAや抗体関連拒絶が世界的に注目され始めたが、治療法を含め確立した概念がない。 本研究では、肺移植後のDSA産生や抗体関連拒絶の頻度、治療につき、多角的に検討することを行う。同研究は、肺移植における抗体の意義を確認するとともに、血液型不適合やDSA陽性肺移植の臨床実施への足がかりとなる。また、HLAの観点から、生体と脳死肺移植のデータを比較することで、「本邦で生体肺移植が脳死肺移植より良好な予後を示す」謎を解く鍵となる。さらに、肺移植における術後DSAおよびAMRの頻度については、調査を行うだけでも情報の蓄積という意味で価値がある。さらに、同一基準の医療における比較検討を行うという意味で信頼性の高いデータとなる。 実際的には、これまでに京都大学で行われた肺移植症例に加え、今後京都大学で行われる肺移植症例全例を対象に、術前および術後3-6カ月ごと、および、AMRが疑われる移植肺機能不全時に、HLA抗体のスクリーニングとImmuKnowなどの新技術を用いた各種バイオマーカーの測定を行う。HLA抗体陽性時には、DSAか否かの精査を行い、DSA陽性の場合には、生体肺移植では、ダイレクトクロスマッチとC4d染色を含む肺生検を行う。脳死肺移植では、C4d染色を含む肺生検のみ行う。AMRを強く疑う際には、ガンマグロブリン大量療法などによる治療を行う。その後、DSA、各種バイオマーカーの推移を経過観察し、定期的に登録データを網羅的に解析し、成果を報告する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
京都大学で平成26年3月末までに肺移植を行った92例(生体46例、脳死46例)において、京都大学輸血部の協力を得て、予定通り、術前および術後3カ月ごとに、LABScreen Mixed Class I and IIを用いてHLA抗体のスクリーニングを行った。なお、術後2年以上経過した移植患者に関しては、無症状であれば、一年ごとの当院来院時にスクリーニングを行った。さらに、当初予定していた通り、種々のバイオマーカーの測定も行った。バイオマーカーとしては、LDH, CRP, 血漿アミロイドタンパクA(SAA),ImmuKnow値(Cylex社),IL-6, IL-10, TNF-αなどのサイトカインを測定する予定である。なお、これらの測定においては、京都大学で現行で行われている検査については、経費節減のために、該当研究費用からは検出する必要のない分に関しては捻出せず、新規の検査項目(ImmuKnow値、IL-6, IL-10, TNF-αなどのサイトカインなど)のキット購入などに充当するようにした。 HLA抗体の測定結果としては、17例に術後HLA抗体を検出した。このうちDSAは7例で、生体肺移植で3例、脳死肺移植で4例であった。なお、DSAの検出時期は、生体肺移植では術後1年以降に検出し、2例では持続的に検出、1例では、検出されてから1年で消失したが、グラフト機能は根絶し再肺移植を要した。一方、脳死肺移植では、術後3か月以内に全例検出されたが、数か月以内に全例消失し、全例でグラフト機能は維持された。このような生体肺移植と脳死肺移植において、特徴的な経過を示したため、現在、症例の蓄積を続けるとともに、術前の因子(たとえば、HLAのミスマッチ数など)についても、さらなる追加の検討を開始した。
|
Strategy for Future Research Activity |
脳死肺移植のみならず生体肺移植が一定数行われている京都大学において、肺移植後のDSA産生やAMRの頻度、およびその対処法につき多角的に検討し、その成果を世界に発信する。これまでに京都大学で行われた肺移植症例に加え、今後京都大学で行われる肺移植症例全例を対象に、術前および術後3-6カ月ごと、および、AMRが疑われる移植肺機能不全時に、HLA抗体のスクリーニングと各種バイオマーカーの測定を行う。なお、各種バイオバイオマーカーの測定を充実して行うが、バイオマーカーとしては、LDH, CRP, 血漿アミロイドタンパクA(SAA),ImmuKnow値(Cylex社),IL-6, IL-10, TNF-αなどのサイトカイン以外のものについても適宜追加検討をしていく予定である。HLA抗体陽性時には、DSAか否かの精査を行い、DSA陽性の場合には、生体肺移植では、ダイレクトクロスマッチとC4d染色を含む肺生検を行う。脳死肺移植では、C4d染色を含む肺生検のみ行う。AMRを強く疑う際には、ガンマグロブリン大量療法による治療を行う。その後、DSA、各種バイオマーカーの推移を経過観察し、定期的に登録データを網羅的に解析し、成果を報告する。 平成26年度も、平成25年度と同様なタイミングでの各種検討とさらなる詳細な経過観察を行う。なお、年度末に、全登録移植患者のデータを集積し、DSA、AMRの頻度、その対処策の効果、移植肺機能の経過、DSAの消失率、予後、およびバイオマーカーとの関係につき検討を行う。C4d染色の有効性についても評価する。最終結果を国内および国際学会で報告後、論文化する。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Appearance of Posttransplant De Novo Anti-HLA Antibodies in Living-Donor Lobar Lung Transplantation.2013
Author(s)
Ohsumi, F. Chen, K. Yurugi, T. Maekawa, T. Yamada, M. Sato, A. Aoyama, T. Sato, M. Sonobe, M. Omasa, T. Bando, I. Matsumoto, H. Date.
Organizer
33th Annual Meeting of the International Society for Heart and Lung Transplantation,
Place of Presentation
Montreal
Year and Date
20130424-20130427