2013 Fiscal Year Research-status Report
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25670622
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小泉 修一 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (10280752)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アストロサイト / 虚血 / P2X7受容体 |
Research Abstract |
強力な脳保護作用を呈する「脳虚血耐性現象」における、グリア細胞の役割を明らかにする目的で研究を行った。虚血耐性とは、先行して非侵襲的虚血(PC: preconditioning)を経験することにより、その後の侵襲的虚血に対する抵抗性を獲得する現象である。平成25年度に明らかとしたことは以下である。 1. In vivoマウス脳虚血耐性モデルを独自の方法で作成し、PCによる虚血耐性獲得にはアストロサイトの活性化が必須であった(グリア性虚血耐性)。各種生化学的手法(WB, 免疫組織化学)及び分子生物学的手法(qPCR)により、PCにより神経細胞の傷害は起きていないが、感受性の高いアストロサイトで活性化が起きている事を明らかとした。この活性化アストロサイトが虚血耐性とリンクしているか否かを明らかとするため、アストロサイトの活性化を薬理学的に抑制したところ、虚血耐性現象も消失した。従って、アストロサイトの活性化が虚血耐性獲得のトリガーと成ることが明らかとなった。ミクログリアもそれに先行して活性化していたが、ミクログリアの活性化は虚血耐性現象の誘導とは関連していなかった。 2. 活性化アストロサイトで発現誘導されるP2X7受容体がグリア性虚血耐性の責任分子であった。活性化アストロサイトが如何にして虚血耐性を誘導するかを解析した。PCによる変動する各種分子の中から、P2X7受容体を見出した。PCによりアストロサイト活性化依存的にP2X7受容体の発現が亢進すること、またP2X7受容体欠損動物では、虚血耐性現象が誘導されないことが明らかとなった。 以上、これまで神経細胞を中心に検討が行われてきた「虚血耐性」現象に、グリア細胞の視点を導入し、特にアストロサイトが重要な役割を果たしていること、また、責任分子としてP2X7受容体を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
虚血耐性現象にグリア細胞(アストロサイト)の活動が必須であるとする「グリア性虚血耐性」をin vivoモデルにて明らかとすることができた。さらに、グリア性虚血耐性誘導因子として、PCで誘導されるP2X7受容体の発現亢進が必須であることを明らかとし、その分子実態の一端が明らかとなった。これらの研究は、全てin vivo動物実験における現象とリンクしており、実際のヒトの虚血耐性を反映する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
① アストロサイト由来P2X7受容体の下流シグナルの解明 最近の研究で「HEK293にP2X7受容体をトランスフェクトしたとき、HIF-1α発現量が増加する」ことが報告されているが(Amoroso et al., Cell Death Dis. 2012)、アストロサイト由来P2X7受容体の下流にHIF-1αシグナルが存在しているかどうかは不明である。そこで、培養アストロサイトにP2X7受容体アゴニストで刺激したときにHIF-1α発現量が増加するか調べる。また、神経保護作用を持つHIF-1αのターゲット分子(エリスロポエチン、血管内皮細胞増殖因子等)が増加しているか調べる。 ② in vitro虚血耐性モデルによるアストロサイト依存的虚血耐性の分子メカニズムの解明 In vivoモデルで示唆された「アストロサイト由来P2X7受容体を介した神経保護作用」をアストロサイトと神経細胞の共培養にて証明する。即ち、in vitroにて虚血を模倣した無酸素無糖条件(OGD)を培養アストロサイトに短時間負荷する(PC)。その後、神経細胞を培養アストロサイト上に添加し、長時間OGDを負荷する。そのとき、短時間OGD負荷をした培養アストロサイトには神経細胞保護効果があることを確認する。そして、WTとP2X7-KOのアストロサイトで長時間OGD負荷による細胞死の抑制程度に違いがあるか解析する。また、短時間OGDの代わりにP2X7受容体アゴニストを添加したときにも同様に虚血耐性効果が得られるか検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下の2つの理由による。P2X7-GFPノックイン動物の作成及びその解析に消耗品費・人件費を割く予定であったが、本トランスジェニック動物が既に他施設に存在することから、既存動物を導入することにしたため。またin vivoの脳虚血実験の検証に時間がかかり、In vitroによる分子生物学的な解析が遅れたため。 グリア性虚血耐性の必要条件である、アストロサイトのP2X7受容体の発現亢進から、虚血耐性が誘導される分子メカニズムを主にin vitroの分子生物学的・生化学的実験により明らかとする。特に、酸素ホメオスターシスの中心分子であるHIF1aに注目した解析を展開し、虚血耐性によけるアストロサイトの役割、重要性、神経細胞とは異なるグリア性虚血耐性現象の病態生理学的意義の解明を目指す。
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[Journal Article] Involvement of glial P2Y1 receptors in cognitive deficit after focal cerebral stroke in a rodent model.2013
Author(s)
Chin Y, Kishi, M., Sekino, M., Nakajo, F., Abe, Y., Terazono, Y., Kato, F., Koizumi, S., Gachet, C, Hisatsune, T
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Journal Title
J. Neuroinflamm
Volume: 10, 95
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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