2014 Fiscal Year Research-status Report
デスフルランはなぜ術後認知機能低下を防ぐのか:高齢者の細胞骨格関連遺伝子の解析
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25670673
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
山蔭 道明 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70285005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉野 繁一 札幌医科大学, 医学部, 助教 (00423765) [Withdrawn]
早瀬 知 札幌医科大学, 医学部, 助教 (20579007)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 麻酔科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究経過として、臨床課題として術前認知機能障害のない65歳以上で4時間以上の比較的長時間手術が予定された患者を対象として術前、術後1日目の高次脳機能テスト(MMSE)を行ったところ、デスフルランで麻酔を受けた群はセボフルランと比較してMMSEの点数が良好である傾向が指摘された。このことから、吸入麻酔薬ごとに術後高次脳機能に与える影響が異なる可能性が示唆された。その分子生物学的な機序を探索するため、特に記憶に関与するとされる海馬を標的とし、マウス海馬ニューロンにおいて包括的なmRNA発現解析(=トランスクリプトーム解析)を行う実験系を確立した。その結果Rtn4rl2遺伝子の発現が増大し、LIM-homeodomain family遺伝子群の発現が抑制されることを発見した。Rtn4rl2遺伝子はNogo受容体をコードしており、樹状細胞のミエリンの接着に関与するとされているが、吸入麻酔薬は海馬において樹状細胞のミエリンへの接着を誘導している可能性が示唆された。またLIM-homeodomain family遺伝子群は神経幹細胞の分化を誘導する因子として知られるが、これらが抑制されることにより、幼年期における吸入麻酔薬の曝露は神経幹細胞からニューロンへの分化を抑制する可能性が示唆された。今後はこれらの実験結果に基づき、行動学的な解析を加え、さらに吸入麻酔薬と記憶の回路に関する影響についての機序についてより詳細な検討を加える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトにおいて術後認知機能障害の差異が麻酔薬に起因する可能性を検討できた。脳内の遺伝子発現について検討できた。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスにおける術後認知機能障害モデルの確立を目指す。
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Research Products
(2 results)