2013 Fiscal Year Research-status Report
波長計測限界を超えた超音波周波数解析技術による男性不妊症診断法の確立
Project/Area Number |
25670689
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
畑 豊 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 教授 (20218473)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | アンドロロジー / 医療画像 / 超音波 / 波形限界 / 管径同定 / 周波数解析 / ファジィ論理 / 男性不妊症 |
Research Abstract |
超音波計測においては波長より小さな組織を観察することは困難である。我々は、管状組織においては、5MHzの超音波を用いて、反射周波数によってその径を計測できることを見出した。平成25年度はこの原理を用いて、非侵襲で目的とする径を有する睾丸内の精細管の有無と位置を計測するシステムの開発研究を以下のように実施した。 1.異なる周波数による研究:釣り糸(ナイロン)を用いたファントム実験ではその基本原理を確認済みであるため、超音波帯域をより広げ、まず、10MHzでの原理の検証を行った結果、5MHzでの実験と有効帯域内で5MHzと同じ結果を得た。更に、5MHzより低周波の2MHzでも同様の実験を行い、有効帯域内で同じ結果を得た。これにより、同じ素材では周波数から管の直径を同定できることを確かめた。 2.画像化に関する研究:臨床の現場で必要な情報は、300μmの直径を有する精管の有無とその位置を知ることである。購入した2MHzのアレープローブを用いて、精細管を可視化するための画像化法を提案した。第1の研究では、二種類の直径の異なるナイロン糸を箱の中に多重に配置した精細管のファントムを用いた。計測対象の反射波にフーリエ変換を行い得られたピーク周波数の値と反射波データの振幅値から複数のファジィ所属度を算出する。次に、ファジィ所属度どうしを乗算して、健常な精細管画像と非健常な精細管画像を構成する。健常な画像は精子回収可能な精細管を示し、他方は非健常な精細管の分布図を示す。精度実験の結果、両画像でそれぞれ正確にナイロン糸の分布の有無と位置を示すことができた。第2の研究では、ゴムチューブに2種類のナイロン糸を乱雑に入れた睾丸を模したファントムによる実験を行った、このファントムにおいても,健常な精細管画像と非健常な精細管画像がナイロン糸のそれぞれの有無と場所を示すことに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
課題1:様々な周波数での検証と浸透力が弱い10MHz以上での実用同定 達成度:2,5,10Mhzの周波数を用いた実験を行った結果、同一素材(ナイロン)では、同じ帯域内で同じ結果を得た。従って同一異素材では、周波数と径の関係が同じであることを確かめた。二種類の直径の異なるナイロン糸を箱の中に多重に配置した精細管のファントムによる実験とゴムチューブに2種類のナイロン糸を乱雑に入れた睾丸を模したファントムによって、高周波では浸透率が弱く、臨床現場での応用を考えると中心周波数が5MHz以下でこの医療装置を開発する必要があることがわかった。周波数解析法として、ウエブレット変換を使用し高速に解析を行う手法を開発したが、ウエブレット変換はデータを多重に使用しないため、位置特定の精度はあるが、強度の面でショートフーリエ変換に劣るため、この研究では、ショートフーリエ変換が最適であることを確かめた。 課題2:ヒトの精細管に近い超音波ファントムでの実験を行う。 実際のヒトで摘出されたヒトの睾丸を対象として研究開発を行った。この実験を行うに当たり、兵庫県立大学、石川病院及び大阪大学での倫理委員会を通過させていることを明記しておく。真値はMRI撮影によって得る。MRI(11.7T)は大阪大学の装置で取得した。第1回目は、睾丸を冷凍保存したものを用いた。この際、冷凍を何度も繰り返すと生体組織が劣化するため、1回の解凍で実験を行うために、大阪大学に超音波装置を移動させ実験を行った。その結果、超音波による結果とMRIによる結果を比較するためには、MRIの画像でどの部分が精細管であるのかを同定する技術が必要であることが分かった。2回目の実験では、手術の直後に超音波計測した結果とその後冷凍して大阪大学で取得した画像で比較を行った。超音波の結果と画像による結果を今後精査することで、今後の方針を決定する。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度で実施した研究を基盤として以下のように研究を推進する。また、平成25年度で新たに発生した課題も含めて平成26年度は、以下の方策で実施する。 課題3:倫理委員会で承認を受けた上で実際のヒトのボランティア及び実際の患者に対してこのシステムを適用し、その有効性及び実用性を検証する。 平成26年度ですべての組織の倫理委員会を通過させたため、人体での実験を行う。平成25年度の研究によって明らかになった以下の課題を解決する。 (1)摘出されたヒトの睾丸を用いた実験:①ヒトから摘出された睾丸を水浸で、超音波の研究・実験を行うため、睾丸を固定するジグの開発を行う。睾丸は水に浮くため、それをなるべく圧力をかけずに固定し、超音波を照射してデータ取得を行う装置と方法論を開発する。②MRI画像からの研究として、ヒト睾丸のMRI画像上で、どの部位が精細管であるかを判断する技術が必要である。この研究は、平成25年度に実施するまで明確にならなかった新たな研究である。研究者の畑は、MRI画像処理の経験も豊富であり、画像処理技術も持ち合わせているため、この研究を新たな課題として取り組む。③冷凍と解凍を繰り返すと摘出された睾丸の組織が劣化して実際のデータと合致しないため、冷凍することなく迅速に計測するためのスケジューリングの方法を開発する。これらの研究を推進するため、最新の超音波データ取得装置とMRI画像処理技術を駆使し、今後の研究を推進させる。
|