2014 Fiscal Year Research-status Report
オートファジー細胞死誘導による頭頸部癌新規治療法の開発
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25670714
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
辻 亮 金沢大学, 医学系, 助教 (70632652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇坂 尚宏 金沢大学, 大学病院, 講師 (70377414)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / 上咽頭癌 / Beclin1 / LC3 / LMP1 / EBV |
Outline of Annual Research Achievements |
癌化学療法は従来の腫瘍非選択的な抗がん剤から分子標的薬への移行もしくは併用が試みられている。従来の放射線・抗がん剤、さらには新兵器である分子標的薬は主としてアポトーシス誘導を活性化する。したがって、アポトーシスという共通の経路をこれ以上強化しても抗腫瘍効果に限界があると考えられる。 近年、アポトーシス分子機構が明らかになるにつれ、非アポトーシスタイプの細胞死、特にマクロオートファジー(以下オートファジー)死の関与が注目されている。オートファジーは病的あるいは不要な細胞成分が二重の膜によって周囲から隔離、リソゾームにより消化して再利用する細胞生存維持機構である。通常は小規模のオートファジーが活性化され、細胞の新陳代謝が営まれている。しかし、細胞が飢餓状態になったり、DNA障害等の多大なストレスの際に、大規模なオートファジーが誘導され、修復不能の際には細胞死が誘導される。 では、臨床における癌細胞はオートファジーをどのように利用しているのであろうか。これまでのところ、発癌段階では抑制的に働くものの、栄養供給に乏しい臨床的な癌組織では、癌細胞はオートファジーを活性化して増殖浸潤していることが推測される。栄養や酸素供給の乏しい厳しい環境下で生存する癌細胞ほどアポトーシスやネクローシスには耐性を獲得し、オートファジーを活性化して生存していると考えられる。 これまでに我々は上咽頭癌組織において、シスプラチンベースの化学療法前後におけるオートファジー関連蛋白のBeclin1の発現について免疫組織学的に検討したところ、化学療法前に比べ、化学療法後でオートファジーが増加することを発見した。 今後は上咽頭癌EBV癌タンパクであるLMP1とオートファジー関連タンパクBeclin1やLC3との関連を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上咽頭癌組織を用いての免疫組織学的な検討で、化学療法(シスプラチン)の投与で、オートファジーを促進することがわかったが。上咽頭癌細胞のCNE2を用いた検討では、シスプラチンに加え、オートファジー促進物質(ラパマイシン)を追加すると、オートファジーは促進されるが、細胞死までは誘導されないことがわかった。 オートファジー細胞死を癌治療に利用できないかと考えたが、オートファジーを促進しても、癌細胞死は誘導されなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
EBVがコードする膜タンパクのひとつLMP1は, 上咽頭癌の発がんに関与する。オートファジーは正常な恒常性に必要である一方、がんなど多数の病的過程の発達に寄与すると考えられている。オートファジーは、正常細胞および早期の発がん性形質転換では腫瘍抑制性である。 上咽頭癌の発がんの過程で、LMP1によるオートファジーの抑制が起こっているのではないかと考え、今後は上咽頭癌組織におけるLMP1やオートファジー関連タンパクの発現の検討、上咽頭細胞にLMP1遺伝子を導入し、さらにオートファジー阻害物質の3MAやオートファジー促進物質のラパマイシンを加え、細胞の増殖能などを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
効率的な予算執行により端数が生じ未使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は、翌年度の研究費と合わせて、免疫組織学的検討、ウェスタンブロッティング、WSTアッセイなどに使用予定である。
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