2013 Fiscal Year Research-status Report
新規Src遺伝子改変マウス視神経症モデルの網膜蛋白リン酸化の変動解析
Project/Area Number |
25670729
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
加藤 梧郎 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (60177441)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Src / 網膜神経細胞 / タンパク質リン酸化 |
Research Abstract |
Srcはセリン75のリン酸化により、活性化型の分解が制御される。このセリン75にリン酸化の擬似変異(SD)を導入したSDマウスは、正常眼圧だが老齢化に伴い緩やかな網膜神経節細胞(RGC)の障害が進行する。このSrc特異的リン酸化の脱制御によるRGC細胞死の作用機作を明らかにするため、2D-DIGE 蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動システムを構築した。 1.老齢マウスの網膜単離と保存法:18か月齢の老齢マウスの網膜を単離し液体窒素中で急速凍結、マイナス80度保存した。2.網膜タンパク質可溶化試料の調製とリン酸化タンパク質の精製方法:超音波破砕法により一個の網膜あたり180~230μgのタンパク質を得た。10個の網膜より得たタンパク質溶液を固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーにかけて約15%のリン酸化タンパク質を得て、限外濾過法(分子量10kDa以上)によりその約75~80%を回収した。3.二次元電気泳動の方法:野生型網膜試料を用いて検討し、高い分離能と再現性が得られた。当初計画した24 cm ストリップでは、実験スペースの確保が難しく、また、現有設備では高解像度で解析できないので7cmストリップで行うことにした。4.スポットの同定、定量比較法:10個の野生型とSD変異型の各網膜よりリン酸化タンパク質を精製し、Cy3標識した野生型とSD変異型の等量混合試料を内部標準とした。内部標準と同量のCy5標識した野生型試料を一つのゲルで泳動し、もう一枚のゲルでこの内部標準と同量のCy5標識したSD変異型試料を泳動した。同一ゲル上の同一スポットの内部標準の強度に対する野生型の相対強度と他のゲル上の同一スポットのSD変異型の相対強度を比較する。 以上の高い定量性と再現性をもつ2D-DIGEシステムの確立はRGC細胞死の分子的基盤を明らかにするうえで重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、Srcの未知の制御機能の異常による網膜神経節細胞の経年的脱落の亢進の分子機序を、セリン75にリン酸化の擬似変異(SD)及び阻害変異(SA)の各点変異を導入したノックインマウスを用いて明確にすることを目指す。平成25年度ではマウスの飼育維持及び遺伝子型の同定、老齢(18か月齢以上)マウス網膜の収集およびマウス網膜リン酸化タンパクの網羅的解析を目的とした2D-DIGE 蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動システムを確立することが目的であった。研究実績の概要に記したように、網膜リン酸化タンパク質を調製し、2D-DIGEによる分離の再現性と信頼度を確保できるように予備的試行を繰り返して努力した結果、評価系として確立することが達成された。SD系及びSA系変異マウスにおいて、野生型、ヘテロ、ホモ各接合体の老齢オスマウスの準備には、時間と労力を要するが、マンパワーやマウスの飼育スペースの限界、また管理維持費用の制限から昨年度中においては、50%に届かない。そのため、各遺伝子型マウス由来の網膜リン酸化タンパクの調製もやや遅れている。また、2D-DIGEシステムの実施にはクリーンな環境が求められるが、予定していたそのスペースの変更を余儀なくされたため、同システムの機器類の調整・設置に時間がとられた。これらを総合してやや遅れているという自己評価にした。
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Strategy for Future Research Activity |
大型ゲルから小型ゲルへの変更で一度に多数の試料を網羅的に扱えないが、pHレンジを狭めることや、二次元目ゲルのアクリルアミド濃度を変え分子量分画範囲を狭めることにより対処する。10個の野生型の網膜と10個のSD変異型の網膜から同時に同一条件でリン酸化タンパク質を精製、標識し、上記の方法でこの野生型とSD変異型のペアを2D-DIGE 蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動システムで比較定量解析する。この実験をn=1とし、異なる別の10個の野生型とSD変異型の網膜のグループ(セット)による同一の解析実験をn=2とする。nを増やして両者の各スポットの強度の有意な増減を判定する。 ゲルの大きさの変更に伴い、解析試料の数には限界があるので、解析試料の絞り込みを行う。SD系の老齢野生型と老齢ホモ接合体、SA系の老齢野生型と老齢ホモ接合体間の2群試料間でのリン酸化タンパク質の変動を上記のように網羅的に解析し、老齢SD変異型にのみ存在する或いは消失するタンパク質を同定する。変動リン酸化タンパク質の同定に必須な質量分析計は、現有設備がなくまた非常に高価であるので、目的スポットを含むゲルをピックアップし、質量分析計によるタンパク質同定受託サービスを利用する。一つのスポットに複数蛋白質が含まれる可能性も考慮し、MALDI-TOF MASSによるPMF分析からMALDI-TOF/TOF法による解析に変更する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実績の概要に記載したように2D-DIGEシステムの解析条件の変更に伴い予定していた二次元電気泳動装置Ettan DALTsix Large Electrophoresis Systemの購入を取りやめたこと、標識蛍光色素や解析に必要な器具試薬類を扱うメーカー側の事情により納品に通常よりかなり時間が掛かること、この標識蛍光色素の有効使用期限が短いことのため、発注を調整する必要が生じた。 次年度使用額(73,263円)が派生したが、これはマウスの遺伝子型決定や組織可溶化に用いる試薬・酵素類に充てる。平成26年度では、リン酸化タンパク質の精製に用いるphosphoprotein purification kit(54,000×2円)計108,000、リン酸化タンパク質画分のCy3またはCy5による標識に用いるCyDye DIGE Fluors Cy3 及び Cy5(各150,000×4)計600,000円、二次元電気泳動に用いる薬品および消耗器具類に256,000円を使用。チューブ及びチップ等のプラスチック器具に合計60,000円。マウスの遺伝子型決定に用いる32Pヌクレオチド類(放射性同位元素)に61,000円を使用する。 その他の費用として、遺伝子改変マウスの維持と繁殖のため、マウスの管理委託費(山梨大学動物実験施設)として108,000円を、また変動リン酸化タンパク質の同定のため質量分析計によるタンパク質同定受託サービスの利用費用として207,000円を使用する。
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