2013 Fiscal Year Research-status Report
加齢黄斑変性の戦略的な疾患特異遺伝子探索と治療応用
Project/Area Number |
25670733
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
馬場 高志 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (40304216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 幸次 鳥取大学, 医学部, 教授 (10213183)
宮崎 大 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (30346358)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 加齢黄斑変性 / 疾患モデルマウス / 血管新生 |
Research Abstract |
1.因子Xの発現解析:レーザー誘発脈絡膜新生血管マウスモデルを用いて、因子Xとその競合的抑制因子と推定される因子Y、血管新生関連分子の経時的な発現動態をreal-time PCRで確認した。また、血管内皮細胞に選択的に結合するレクチンまたは抗CD31抗体、免疫細胞特異的抗体との二重染色により、脈絡膜伸展標本と組織切片での因子Xと因子Yの脈絡膜新生血管構造内での発現分布を確認し、正常網膜血管や正常脈絡膜血管と脈絡膜新生血管での発現の比較、網膜、網膜色素上皮、リンパ球での発現を解析した。 2.因子Xの作用解析 in vivo:レーザー誘発脈絡膜新生血管マウスモデルを用いて、因子Xおよび因子Yの組み替え体を尾静脈投与または硝子体内投与し、脈絡膜新生血管サイズへの影響を評価し、因子Xおよび因子Yの脈絡膜新生血管への作用を確認した。同様に、抗因子X抗体による脈絡膜血管新生の抑制作用を確認した。さらに、因子Xと因子X受容体を介した脈絡膜新生血管への作用が、主に血管内皮細胞を主体としたものか、免疫細胞を主体としたものかを評価するために、抗CD31抗体結合または免疫細胞特異的抗体と結合した因子XのsiRNAを用いて組織選択的に因子Xの作用を抑制し、脈絡膜新生血管への影響を評価した。 3.因子Xの作用解析 in vitro:マウス骨髄由来血管内皮細胞を用いて、因子Xの刺激によるVEGFを含む主要な血管新生関連因子の発現を解析し、因子Xとの分子メカニズムについて検討した。 4.加齢黄斑変性患者と健常者より得られた検体のSNP解析:同意が得られた加齢黄斑変性患者と健常者より提供された血液検体から得られたゲノム情報をもとに、既知の加齢黄斑変性関連遺伝子とともに因子XのSNP解析を進めている。また、同時に採取した前房水の因子Xとその関連分子の発現を解析し、ゲノム情報との関連を確認中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.因子Xの発現解析は概ね順調である。 2.因子Xの作用解析 in vivo 遺伝子欠損マウスの毛色の調整と遺伝的背景を一致させるための戻し交配について:海外の共同研究施設から入手した因子Xの受容体欠損マウスがもともと白色であったため、レーザー誘発脈絡膜新生血管モデルを作成する際に、レーザーエネルギーの吸収が不良で、毛色を黒色にして脈絡膜色素上皮を有色に変更する必要があった。また、毛色を白色から黒色にするため、戻し交配を施行しているが、もともと因子Xは生存に重要な遺伝子で、通常の交配により個体数を増やすことが困難であった。また、因子Xの遺伝的背景はBalb/cで、C57BL/6に近づけるべく戻し交配を行っているが、戻し交配の過程で、マウスの遺伝的背景による血管新生の感受性への影響を無視する事が困難なため、数代の継代では、純粋な因子Xの関与を評価する事が困難であった。現在、鳥取大学生命機能研究支援センター動物資源開発分野の支援のもと、C57BL/6を遺伝的背景に持つ黒色の因子Xの受容体欠損マウスを体外受精によって作成することに成功し、戻し交配でN3まで継代し増産しており、来年度には研究に使用できる十分な数に到達する見込みである。 3.因子Xの作用解析 in vitro:概ね順調である。 4.加齢黄斑変性患者と健常者より得られた検体のSNP解析:現在、加齢黄斑変性患者と健常者から得られた検体は合計50例を越え、順調であるが、解析のための予算的な制約もあるため、まず、当施設のデータについて、既知の遺伝子のSNP解析の報告との整合性を確認し、合わせて因子XのSNP解析から、因子Xの疾患感受性への関与について確認できるように症例数の目標到達まで、調査を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.因子Xの作用の解析 in vivo:C57BL/6との戻し交配によって、C57BL/6を遺伝的背景に持つ黒色の因子Xの受容体のホモ型ならびにヘテロ型欠損マウスと、その過程で産出された野生型マウスが、実験に使用できる十分数まで増産でき次第、それぞれのマウスを用いたレーザー誘発脈絡膜新生血管モデルを作成し、脈絡膜新生血管への感受性を確認する。また、因子Xの受容体の組み替え体や因子Xの受容体の組み替えプラスミドを硝子体内注射で眼局所に導入して、脈絡膜血管新生の感受性が補完されるかどうか確認する。また、因子Xが眼局所のみで脈絡膜血管新生を制御しているのか、骨髄を含む全身に作用することで制御しているのかを明らかにするため、マウス骨髄由来血管内皮細胞にGFPプロモーターと因子X、因子X受容体、因子Y受容体遺伝子を組み込んだプラスミドを導入し、これらの遺伝子発現を確認した上で血管内皮細胞を尾静脈注射し、脈絡膜新生血管での局在を確認する。因子Xの欠損マウス、因子X受容体の欠損マウス、因子Y受容体の欠損マウスと野生型マウスの脈絡膜血管新生感受性の違いを明らかにして、因子Xと因子Xの受容体下流のシグナル伝達が、脈絡膜血管新生に重要な役割を果たす事を証明する。因子Y受容体が脈絡膜血管新生の制御にどのように関与しているかは、まだ不明であるが、因子Xと因子Xの受容体を介する系を制御する他の因子についても更に解析したい。 2.加齢黄斑変性患者と健常者より得られた検体のSNP解析:因子XのSNP解析から、因子Xの関与が確認できた場合、引き続き当院の症例数を増やすとともに、加齢黄斑変性患者の検体を多く持つ他施設と共同し、当施設の結果の検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子欠損マウスの毛色の調整と遺伝的背景を一致させるためのC57BL/6との戻し交配を行うなどの遺伝子欠損マウスを準備増産していたため、マウスを用いた実験が進まなかった。そのため、マウスの購入額と飼育料、試薬の代金が予想より下回った。 次年度、C57BL/6との戻し交配によって、C57BL/6を遺伝的背景に持つ黒色の因子Xの受容体のホモ型ならびにヘテロ型欠損マウスと、その過程で産出された野生型マウスが、実験に使用できる十分数まで増産できる予定なので、その実験費用にあてる予定である。
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