2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒト体細胞から網膜視細胞への再生分化における杆体・錐体の運命決定と機能獲得
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25670741
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
Principal Investigator |
世古 裕子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 研究室長 (60301157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 範行 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 室長 (10159395)
梅澤 明弘 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 部長 (70213486)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 網膜再生 / 直接的分化誘導 |
Research Abstract |
網膜の再生研究は近年急速に進み、実用化も近いと言われる。しかしながら、in vitroで視細胞本来の光応答である過分極反応を示す最終分化した視細胞まで分化誘導することができた報告はない。また試験管内で再生された網膜組織には、ヒトの視覚で最重要な中心視力を司る黄斑は形成されておらず、黄斑を形成する錐体細胞を杆体細胞と作り分ける方法も確立されていない。本研究では、“ダイレクト・リプログラミング”(直接的分化誘導)によって、1、ヒト網膜視細胞を構成する錐体細胞と杆体細胞とを作り分け、2、形態学的に外節をもち、視細胞本来の過分極反応を示す最終分化した視細胞まで分化誘導する、の2点を目標とする。完全な機能をもつ視細胞は、再生医療のみならず、網膜変性過程に抑制的に働く薬剤のスクリーニング、網膜変性疾患のメカニズム研究などの目的のためにも、きわめて有用なツールとなる。 25年度には、細胞ソースを眼球由来細胞である虹彩細胞から、より一般的な細胞である皮膚線維芽細胞へと広げ、遺伝子導入する転写因子を3因子から4因子へと追加することによって、誘導された視細胞様細胞が、本来の視細胞に近い光応答を示すことが電気生理学的手法によって明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
普通の線維芽細胞などの細胞(体細胞と呼ばれる)に数種類の転写因子遺伝子をミックスして導入すると必要な細胞が得られるという“ダイレクト・リプログラミング”と呼ばれる技術も開発され、すでに心臓、膵臓、神経などがつくられている。申請者の世古らは、この方法で網膜視様細胞を作製した。CRX,NEUROD,RAXの3種類の転写因子遺伝子をレトロウィルスベクターを用いてヒト虹彩由来細胞に導入すると、視細胞特異的な光トランスダクションに関わる遺伝子・蛋白の発現がみられ、錐体と杆体との運命決定に関わる可能性のある転写因子も示唆された(Seko Y et al. PLoS One,2012)。この誘導視細胞は、パッチクランプによって光応答があることも確認されたが、その光応答は視細胞型の過分極反応ではなく、脱分極反応であり、形態学的にも外節は確認できなかった。1昨年度は、いかなる細胞ソースでも、in vitroで、形態学的に外節をもち、視細胞本来の光応答を示す最終分化した視細胞に分化誘導することはできなかった。 今回、ヒト皮膚線維芽細胞にCRX,NEUROD,RAXの3種類にOTX2を加えた4種類の転写因子を導入することによって、光応答として視細胞型の過分極反応を示す細胞が作られることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、ヒト皮膚線維芽細胞にCRX,NEUROD,RAXの3種類にOTX2を加えた4種類の転写因子を導入することによって、光応答として視細胞型の過分極反応を示す細胞が作られることを明らかにした。しかし、誘導された細胞集団の中で、分化の程度には違いがあり、明らかな光応答を示す細胞からわずかな応答しか示さない細胞まで様々であった。 今後は、分化した細胞を純化するシステムを構築することがひとつめの課題である。そのために、薬剤によってスクリーニングするシステムを作ることを検討している。 次の課題は、細胞全体として、より分化の程度を完全なものに近づけることである。そのために、in vivoに近い条件で培養するため、グリア細胞や網膜色素上皮細胞との共培養を行う。さらに、4類の転写因子を本来の発生過程に近い時系列で導入するために、レトロウィルスベクターを用いず細胞質に細胞質型RNAウィルスの形で導入する、などを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
必要な物品を購入した結果、端数として繰り越しが生じた。 次年度に物品費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)