2014 Fiscal Year Research-status Report
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25670768
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
梅澤 和夫 東海大学, 医学部, 講師 (30349344)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 皮膚揮発性ガス / 広範囲重症熱傷 / アンモニア / 低級脂肪酸 / 皮膚移植 / 皮膚再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症熱傷患者15例に対し実施した。熱傷創部ガーゼより揮発するアンモニアを測定したところ受傷後1週間は低値で、以後、熱傷創デブリードマン実施後に上昇が見られ、以後、皮膚移植後(自家移植、同種移植)に更に上昇、皮膚の生着、創閉鎖後が最大値となった。一方、血中アンモニア濃度は皮膚ガスより検知させたアンモニア濃度の推移とは異なり、経過を通じ変動はなかった。健常ボランティアの検討では皮膚揮発性アンモニアは1)運動負荷、2)不眠時の早朝、3)睡眠時覚醒前に上昇していた。本件検討より皮膚揮発性アンモニアは1)皮膚の再生により上昇、2)日内変動が大きいとの知見が得られ、一般的に考えられている肝臓での代謝不全による上昇では説明が出来ない動態を示しており、皮膚局所でのアンモニア産生が示唆され、それは運動、交感神経-副交感神経バランス等、自律神経系の影響を受けていると推察した。 一方、皮膚揮発性低級脂肪酸は熱傷受傷後早期、皮膚移植後、皮膚生着の経過に於いて上昇が見られなかった。しかしながら健常ボランティアによる検討では睡眠時に於ける周期的変動が観察されておりREM、non-REM睡眠と同期した変動があることが推察された。創部ガーゼからの揮発性低級脂肪酸測定による検討では変動は観察されなかったが、夜間等、測定時間を変えて検討する必要がある。 患者周辺環境の空気分析ではアンモニア気中濃度は熱傷患者創部ガーゼからのアンモニア濃度の変動と類似した動向を示したが室内気流、ヒトの動きなどの影響を受けるため症例毎の変動が大きく、測定方法の検討が必要である。 非特異的吸着カラムによる検討では百種程度の物質を検知しており、臨床経過、創部感染等の状態を勘案し、有意物質の絞り込みを行っている。 研究成果は第61回日本臨床検査医学会学術集会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では熱傷創部感染により発生した揮発性物質を分析し細菌同定法を開発する事を目的としたが、平成26年度までの検討では感染に伴う揮発性物質発生の他に熱傷創の皮膚再生によるアンモニアの動態が判明し、皮膚揮発性物質分析は感染症診断のみに留まらず、様々な応用はにがあることが期待される。 現在、非特異的吸着カラムによる広範な物質の検知、解析を行っており、本来の目的範囲を超えた成果が得られる可能性があり、研究は概ね順調に進行している。研究の進行には症例数の確保が重要であるが現在までの2年間の研究期間に於いては15例症例の検討を行っており、最終年度である平成27年度までの3年間では20~25症例に症例数が増えることが期待され、統計学的検討に耐える症例数になることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
アンモニア吸着フィルター、低級脂肪酸吸着フィルター、非特異的吸着カラムの3種の吸着体を使用している。平成26年度までに使用してきた非特異的吸着カラムは有機溶剤の検出に優れた吸着特性を有するが、生体由来揮発性物質の検出には分離性が悪く、現在、新しい非特異的吸着カラムに変更し、基礎的検討を行ったところ、分離性の向上が見られ、カラムの変更を行った。現在まで検討した症例の創部ガーゼは冷凍保存しており、新しい吸着カラムでの再検討、新規登録症例の検討と合わせ、細菌由来揮発性物質を捕捉、特定し細菌同定のためのアルゴリズム解析を行う。細菌同定は従来の培養法による同定の他に冷凍保存ガーの16SリボゾームDNA解析による細菌同定も行い、検出揮発性物質によるクラスター解析により細菌同例アルゴリズムを検討してゆく。
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Causes of Carryover |
平成26年度において発注した物品において品切れ品、輸入遅延による年度内納品が出来なかった物品(消耗品)が発生したため、請求分と使用金額に差異が生じた。平成27年度に納品されるため、平成27年度の研究費の執行となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度において発注した物品において品切れ品、輸入遅延による年度内納品が出来なかった物品(消耗品)平成27年度に納入されるため、平成27年度の消耗品として計上する。
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