2013 Fiscal Year Research-status Report
口腔微生物由来の血中TLRリガンドに起因する糖尿病性腎症の促進機構の解明
Project/Area Number |
25670803
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
沢 禎彦 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (70271666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
敦賀 英知 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (30295901)
畠山 雄次 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (40302161)
岡 暁子 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (60452778)
谷口 邦久 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (90105685)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 糖尿病性腎症 / toll-like receptor / 歯周病 / Porphyromonas gingivalis |
Research Abstract |
2011年に1070万人を数えた糖尿病は40%に腎症が合併することから、その予防は喫緊の課題となっています。しかし、糖尿病性腎症のメカニズムは明らかにされておらず、血糖と血圧をコントロールしても腎症に移行する方がいる理由はわかっていません。私たちは本研究で、糖尿病性腎症のヒトと実験的に糖尿病を起こしたマウスの腎では糸球体毛細血管が自然免疫受容体toll-like receptor (TLR) 2と4を発現することを示しました。毛細血管のTLR2/4発現は他の臓器血管では見られない現象です。糖尿病になると高血糖によって血中の蛋白が糖で修飾され終末糖化産物を形成し、様々な合併症の原因となると考えられています。腎糸球体は糸玉状の血管の塊で、血中物質が溜まり易いことから、糖尿病腎糸球体では終末糖化産物の蓄積が刺激となってTLR発現が起こるのではないかと考えました。TLR2/4は細菌を認識して炎症反応を起こします。そこで、糖尿病マウスに歯周病の原因菌であるPorphyromonas gingivalisの成分(pgLPS)を投与したところ、腎糸球体における炎症性サイトカインの発現、組織修復の過程でおこるコラーゲンの蓄積(糸球体硬化)と尿蛋白の増大が見られ、pgLPSを投与した健康なマウスが全数生存している6ヶ月以内に、pgLPS投与糖尿病マウスが全数死亡(人道的エンドポイントにて安楽死)しました。このことから、糖尿病では、糸球体にTLR2と4の発現が起こり、歯周病原因菌が糸球体硬化による糖尿病性腎症を促進させる可能性が示唆されました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の解決に向かって、実験計画は滞り無く進行しています。試薬の調達、マウスの作製、分析などすべて問題ありません。私たちは本研究で、糖尿病性腎症のヒトと実験的に糖尿病を起こしたマウスの腎では糸球体毛細血管が自然免疫受容体toll-like receptor (TLR) 2と4を発現することPorphyromonas gingivalis LPS (pgLPS)投与糖尿病マウス腎糸球体における炎症性サイトカインの発現、組織修復の過程でおこるコラーゲンの蓄積(糸球体硬化)と尿蛋白の増大と腎症による死亡(人道的エンドポイントにて安楽死)を示したのは、大きな研究成果であると考えています。糖尿病患者では、歯周病が腎症を起こす可能性が示唆されました。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、研究は次のステップに入り、TLR4特異的阻害剤であるエリトラン(エーザイ)のpgLPS投与糖尿病マウスに対する延命効果を調べています。歯周病ではブラッシングで口腔細菌が容易に血管の中に入ります(菌血症)。今後は、TLR阻害剤の糖尿病性腎症に対する抑制効果、また糖尿病患者は口腔を清潔に保つことが腎症の予防にきわめて重要であることを示していきます。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
理由 当初、試薬およびマウス購入を予定した配分額に達する以前に、実験が成功し、当該年度目標が達成されたこと、さらに、目標以上の研究成果である、「糖尿病マウスは健康マウスと比較して口腔細菌由来物質にによる寿命が短縮する」結果を受けて、本年度研究計画の遂行予算の増加(口腔細菌由来物質Porphyromonas gingivalis lipopolysaccharide)購入代金が必要となったため。 使用計画 目標「糖尿病マウスの口腔細菌由来物質Porphyromonas gingivalis lipopolysaccharideによる寿命短縮の阻止」を目指す。助成金は、1)糖尿病マウス作製のためのマウスおよび試薬、また飼育費、2)Porphyromonas gingivalis lipopolysaccharide購入費、3)Porphyromonas gingivalis lipopolysaccharideを認識するTLR阻害剤購入費、4)糖尿病マウス腎症における血中および尿の分析のためのキット消耗品、5)ヒトおよびマウス糖尿病腎の免疫染色、リアルタイムPCR、ELISAなど生化学および形態分析のための消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(17 results)