2013 Fiscal Year Research-status Report
気圧変動および模擬無重力環境下での歯髄細胞の痛覚受容体発現に関する研究
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25670810
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
永田 俊彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10127847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 慶二 徳島大学, 大学病院, 講師 (00253211)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歯髄細胞 / 気圧変化 / 疼痛受容体 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
培養歯髄細胞としてラット歯髄細胞由来細胞株RPC-C2Aを用い、気圧変化の影響を調べる実験を開始した。まず、本年度購入した真空インキュベーターを用い、減圧下での細胞培養の予備実験を行った。気圧変化に伴い空気の排出・流入があるため、培地のpH緩衝にはHEPESを用いた。その結果、減圧(0.5気圧)下でも大気圧(1.0気圧)中と同様に細胞培養を継続出来ること、増殖速度には大きな影響がないことが明らかになった。 減圧下で生じる遺伝子の発現変化を網羅的に調べるため、気圧の異なる条件下で培養した細胞からそれぞれRNAを抽出し、マイクロアレイ分析によって各種遺伝子の発現量を比較した。その結果、0.5気圧下で6時間~24時間培養した細胞と、1.0気圧下の細胞との比較では、発現量が著明に異なる遺伝子は見つからなかった。さらに8日間培養を継続しても、0.5気圧下と1.0気圧下で発現量に著明な相違がある遺伝子はなかった。マイクロアレイで解析された遺伝子の中には、温度受容体TRPA1, TRPM3, TRPM8, TRPV3, TRPV4や慢性疼痛ATP受容体P2X3, P2Y6が含まれていた。すなわち、これらの遺伝子は気圧変化だけで発現量が変化するわけではないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は気圧変化や模擬無重力が細胞に及ぼす影響を調べることが目的であるが、そのための標準的な実験系は未だ確立されていない。今回購入した真空インキュベーターは、チャンバー内が設定した気圧・温度に厳密に維持されるよう作られている。これを用いることで、一定の減圧下での細胞の動態が初めて解析可能となった。すなわち、3Dクリノスタットと合わせて、気圧変化と模擬無重力環境下での実験を行う環境が整ったことから、当初の目標の一つが達成されたと考えている。 培養歯髄細胞の痛覚受容体を調べる実験では、目的遺伝子を含め、より広く網羅的に遺伝子発現の変動を検索した。その結果、多くの遺伝子の発現変化についての知見を得た。当初は受容体個別に遺伝子レベル、蛋白レベルで検索する予定だったが、先に網羅的に検索をすることで、当初の予定とは進め方が変わったものの、研究自体は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定通り、各痛覚受容体およびサイトカイン分子の発現の関連性、内毒素(LPS)刺激による発現の変動に対して、気圧変化・模擬無重力環境の影響を調べる予定である。 予備実験に用いた減圧条件(0.5気圧)では遺伝子発現の変動が少なかったことから、気圧条件に関してはさらに異なる条件についても確認する予定である。 また、歯髄細胞株としてRPC-C2Aを用いてきたが、異なる細胞株、もしくは初代培養細胞系を使った実験も計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、個々の標的分子に対してそれぞれ個別のPCRプライマー、特異抗体を購入する予定だったため、その費用を予算計上していた。しかし、先にマイクロアレイ解析を行うことで網羅的に遺伝子発現を検索し、変動の見られた標的分子のみを取り上げることにしたため、プライマー費用、抗体費用を大きく削減することが出来た。 今後も必要に応じて予め網羅的検索を行うことで、研究をより効率的・効果的に遂行できると考えられる。しかし、マイクロアレイ解析には1サンプル5~10万円かかるため、本年度削減できた費用をこれに当てる予定である。
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