2013 Fiscal Year Research-status Report
骨代謝異常に対応可能な骨代替材料と破骨細胞前駆細胞による次世代骨再生医療の展開
Project/Area Number |
25670834
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
池田 通 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00211029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 正宏 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00294570)
井奥 洪二 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60212726)
上高原 理暢 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (80362854)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 再生医療 / 骨代謝 / 骨形成 / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / 幹細胞 / 骨代替材料 |
Research Abstract |
骨新生を促す治療には骨芽細胞だけでなく破骨細胞も共に移植することが重要であるという仮説のもと、皮下移植系で最適条件を見いだすための第1段階の研究を行った。皮下移植の系では、Fisherラットの背部に左右2か所、40 mgずつのセラミックを移植した。間葉系幹細胞なし、間葉系幹細胞を5x105個、1x106個、2x106個の各条件で移植したが、新生骨形成は乏しく、皮下では安定した骨形成が認められなかった。これは予備実験と全く同様であり、再現性が確認された。しかしその一方で、驚くべき副所見が得られた。皮下に移植した柱状粒子HA周囲の多核巨細胞の80%以上が、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ陽性かつカテプシンK陽性の破骨細胞であったが、皮下に移植した通常のHA周囲の多核巨細胞の80%以上は酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ陰性、カテプシンK陰性の異物巨細胞であった。特に間葉系幹細胞を加えないセラミックのみの移植部位で明確な結果が得られた。同部には骨形成及びアルカリホスファターゼ陽性細胞の出現は全く見られず、骨または骨への分化傾向を有する細胞が全くない骨外環境で柱状粒子HAは破骨細胞を誘導したと判断された。 この思いがけずに得られた所見は、骨芽細胞形成が先か、破骨細胞形成が先かという長年の疑問に対して現在少しずつ集まりつつある研究成果のいずれもが骨芽細胞形成が先であることを示唆しているのに対し、全く相反する情報を提供している。また、破骨細胞が骨芽細胞の誘導や骨形成に重要であるという、本研究の大胆な仮説を強く支持する結果として注目される。今年度の実験では移植4週後、7週後に試料を採取しているが、骨形成を促すにはさらに長期間必要なのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題を開始する直前に研究分担者の西村が、研究代表者が所属する長崎大学から鹿児島大学に転任し、研究体制の立ち上げが予想より遅れた。その影響もあり、移植実験の進行状況はやや遅れていると言わざるを得ない。しかしながらその過程で、我々が開発した柱状粒子HAは骨芽細胞や骨がない状況で骨外に破骨細胞を誘導できるという生物学的に極めて興味深くかつ重大な所見が得られた。その意義の大きさを考慮すると、総合的には本研究課題の目的を十分に達成しつつあると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
破骨細胞または破骨細胞前駆細胞を骨芽細胞と共に移植することが骨誘導に効果的であることを、今後計画通り間葉系幹細胞と破骨細胞前駆細胞を種々の混合比にて移植し、比較検討する。一方で、純粋に生物学的な興味として、なぜ骨芽細胞または骨組織がない部位に柱状粒子HAは破骨細胞を誘導できたのかを確認することも重要である。そのために、破骨細胞誘導と異物巨細胞誘導という現象を何が振り分けているのか、細胞生物学的に少しでも情報を得るための基礎研究も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額393円ほどの少額必要物品がなかったため。 少額であるため、次年度の物品費としてほぼ当初の計画通り使用する計画である。
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