2013 Fiscal Year Research-status Report
注入型骨膜幹細胞含有ゲルによる新規歯槽骨増量法の開発
Project/Area Number |
25670849
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内野 夏子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30569637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 和美 東京大学, 学内共同利用施設等, 講師 (10396715)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歯槽骨再建 / 幹細胞 / ペプチドハイドロゲル |
Research Abstract |
顎顔面領域の先天性骨欠損や歯周病、口腔腫瘍切除後の後天性骨欠損の骨再建を侵襲性が低く、安全性の高い注入型の幹細胞含有ゲルの開発を行う。 ラットの下顎骨から骨膜を採取し、単離後、低密度で培養を行った。4週間後、50細胞以上の細胞塊をコロニーとし、コロニー数を計測した。対象として、同様な単離方法、培養方法で増殖させた歯根膜、骨髄、歯髄の細胞と比較を行ったところ、骨膜由来の細胞では、対象細胞と比較してコロニー形成率が有意に高値を示した。ヒト由来の骨膜でも同様な検討を行い、有用性を検証した。オトガイ形成術の際にオトガイ部骨膜をインフォームドコンセント後に患者から採取した(東京大学医学部倫理委員会承認済み#622)。採取した骨膜をラットで確立した方法で培養を行い、コロニー形成率を計測した結果、コロニーが多数認められ、肉眼的にも良好なコロニー形状が観察された。コロニー形成細胞より算出した増殖曲線からも良好な増殖が認められたことから、ラットおよびヒト由来の骨膜由来細胞は他の口腔領域由来の細胞よりも幹細胞特性を有する細胞が多く存在していることが確認された。 次に、確立した骨膜由来のコロニー形成細胞と通常の培養骨膜由来細胞を比較するために、レクチンアレイを用いて表面糖鎖の網羅的な解析を行った。並行してGeneChipを用いたマイクロアレイによる遺伝子情報を得ることにより、細胞表面の糖鎖構造変化と遺伝子発現の関連性を検討した。また、それらのデータを用いてクラスター分析を行い、統計学的に有意なマーカーの探索を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット下顎骨より骨膜を採取した後、洗浄およびプレカラムフィルターを交互に使用することにより、不純物や他組織の混入を防止することに成功し、夾雑物の少ない骨膜由来細胞を単離する方法を確立した。その方法により単離した骨膜由来細胞を培養し、約4週間後に純度の高いコロニーを得ることに成功した。次に、コロニー形成細胞と通常の培養骨膜由来細胞を用いてレクチンアレイによる簡便かつ網羅的に表面糖鎖を評価し、両者の相違性を把握し、マーカーとなる指標を検討した。ツールとして、クラスタリングアルゴリズムおよびグラフ比較アルゴリズムの生物統計学的手法を用いてマーカーの選択を行なっている段階であり、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、①オトガイ部骨膜幹細胞の培養法・投与法の確立、②ラット骨欠損モデルにおける骨再生の検討、③ラット抜歯窩モデルへの注入型骨膜幹細胞含有ゲルの応用を実施する。オトガイ部骨膜由来幹細胞を投与する方法として培養ディッシュのコート条件ならびに増殖因子を検討することにより、幹細胞の形質を保持し、かつ増殖を促進するハイドロゲルの最適化を行う。組み合わせ条件が揃い次第、ラット骨欠損モデルおよび抜歯窩モデルを作製し、骨膜幹細胞含有ハイドロゲルを欠損部に投与することにより注入型骨膜幹細胞含有ゲルの有用性を検討する。以上の研究より、本研究の最終年度の目標を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度は、前年度までに確立した骨膜幹細胞の単離方法を発展するため、さらに培養法、投与法を検討する。そのため、培養皿、培地、各種因子等が必要となる。また、培養法、投与法の組み合わせの最適化ののち、動物実験による有用性を検討するために、骨欠損モデルと抜歯窩モデルを作製する。 オトガイ部骨膜幹細胞の培養法・投与法の確立として、新規ペプチドゲルPuraMatrix を第一候補と考え、コートする際の蛋白濃度を検討する。最適な組み合せを選択し、統計学的に優位な組み合わせを絞る。骨欠損モデルとして、ラットの頭蓋骨にφ5 mm の全層欠損を作製し、下顎骨骨膜由来幹細胞を移植する。移植後2, 4, 6 週で頭蓋骨を摘出・固定し、骨再生を評価する。上記の結果を勘案し、注入型骨膜幹細胞含有ゲルの作製条件を確立する。ラット抜歯窩モデルへの注入型骨膜幹細胞含有ゲルの応用として、抜歯窩モデルを作製する。生後7 週齢のラットの下顎左側第一臼歯を抜歯し、抜歯窩の骨形成を促進する。抜歯後、注入型骨膜幹細胞含有ゲルを投与し、1、2、4 週で観察を行う。これらの結果を下に、歯槽骨増量における注入型骨膜幹細胞含有ゲルの有用性を検証する。
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