2015 Fiscal Year Research-status Report
新卒看護師のストレス対処能力(SOC)を活性化するストレス緩和プログラムの開発
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25670933
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
中嶋 文子 椙山女学園大学, 看護学部, 講師 (20573687)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 恵 (有田恵) 天理医療大学, その他部局等, 助教 (40467402)
赤澤 千春 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70324689)
BECKER CARL.B 京都大学, 学内共同利用施設等, 教授 (60243078)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 新人看護師 / SOC / ストレス対処能力 / バーンアウト / 職業性ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、平成26年度までの研究成果をもとに開発した教育プログラムによる介入研究を行った。具体的には、研究協力施設2施設の新人看護師70名を対象に、1年間の継続した教育プログラムを実施した。本プログラムは、就職直後、就職3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後の4回に渡って、繰り返し実施する内容である。本研修では、SOCの下位概念である「把握可能感」「処理可能感」「有意味感」を自らの看護業務を当てはめる「成長確認シート」を用いて、自らの成長を確認する機会とした。同時に、各研修時に「職業性ストレス」「SOC」「バーンアウト」を測定し、平成22年度に行った新卒看護師のSOC調査の結果と比較した。 現在、最終回の調査の分析中であるが、就職後6ヶ月までの3回の介入と調査結果によると、職業性ストレスはいずれの項目においても平成22年度の調査より軽減傾向にあり、職場環境が改善されていることがわかった。SOCが就職後3ヶ月の時点で有意に低下するのは平成22年度の調査と同様の結果であったが、就職後6か月の「把握可能感」と「処理可能感」は平成22年度の調査より高かった。これは成長確認シートに看護業務を当てはめることで自らの成長や変化を自覚することが、こうした改善につながったと考える。また、バーンアウトでは「情緒的疲弊」「離人化」ともに平成22年度の調査と同様に時間とともに進行していたが、就職後3ヶ月以後では「自己成就」が上昇していた。ここでも、自身の成長の確認や自覚の影響が考えられる。しかしながら、SOCの「有意味感」は低下しており、自分の成長をより効果的に意味と結びつける工夫が必要である。 以上、1年間の介入研究は予定通り実施し、平成28年度は研究成果の公表と教育プログラムの改善に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、平成25年度に「採用3ヶ月後の新卒看護師のストレス自覚の状況とストレス解消法」を明らかにする研究を実施し、その結果を受けて研修プログラムを作成し、平成26年より教育プログラムの実施・評価を目指していた。しかし、離職などにより予定していた調査対象者が減少し、調査対象者の見直しを余儀なくされた結果、デ一タ収集・分析が遅れ、平成26年度に教育プログラムの開発を行うこととなった。 平成27年度は、新人看護師のストレス対処能力を高める教育プログラムを実施し、同時に新卒看護師の採用時、3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後のSOC調査を行い、プログラムの評価を行った。介入研究は、研究協力施設の70名を対象に1年間を通して実施し、年間計画に沿って順調に実施することができた。 よって初年度の計画実施の遅れを受けて、本研究全体の進展は遅れているものの、平成26年以後の研究は順調に進行しており、平成28年度への1年間の延長を持って研究を完了することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、これまでの研究成果の公表と教育プログラムの改良を行う。 まず、研究成果の公表は、平成28年度看護研究学会学術集会交流集会において、介入研究の結果を報告する。交流集会は90分の発表時間を演者が自由に構成することができる。ここで、1年間の継続した新人教育プログラムを紹介したうえで、新人看護師の職業性ストレス、SOC、バーンアウトが1年間でどのように変化したかを報告する。そのうえで、交流集会への参加とのディスカッションを通して、教育プログラムの改善に活かす。 次に、教育プログラムの改良は、平成27年度の研究協力施設において実施する。当該施設では、今年度も継続して新人教育プログラムを導入しており、研究者らは研修の講師として研修を実施する。研修の枠組みは昨年度と同様であるが、主に以下の3点において改善を行う。1つめは、研修のグループワークの支援にあたるファシリテーターを養成することである。昨年度は、研究協力施設の看護管理や現任教育を担う、ある程度ファシリテーションの経験を持つ人からグループワークの支援を受けたが、研修にかかわることでファシリテーター自身もエンパワーメントされていた。今年は、新人にとっての研修の到達目標だけでなく、ファシリテーター自身も3回の研修を通して成長を実感できるように、ファシリテーターへの研修を実施する。2つめは、SOCの下位概念である「有意味感」を、新人研修の時期別により明確に考えられるようグループワークを設定する。就職後3ヶ月では看護実践の量的変化に、就職後6か月では看護実践の質的変化に着目して、自分の成長を確認する。そして就職後12ヶ月では、看護師としての1年間の社会人経験が自分の生活にもたらした変化に着目して、困難なできごとでも意味のあることとしてとらえなおす機会とする。そして、研修プログラムは平成27年度と同じ調査方法を用いて評価する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、2施設において1年間を通して教育プログラムを実施・運営したため、マニュアルの整備や打合せ、研修実施のための交通費などに基金を利用した。また、研修プログラム評価のために実施した調査の、調査票印刷や郵送のための通信費、調査データ分析のためのソフト購入や、分析のための業者への謝金などを支出した。 介入とデータ収集は1年間を通して行ったことにより、平成27年度内に結果を公表することはできなかったため、分析や公表にかかる予算が残ることとなった。 平成28年度に研究成果の公表と教育プログラムの改善に取り組むために、1年間の期間延長を申し入れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、まず平成27年度の介入研究のデータ分析(就職後12ヶ月)にかかる予算が必要となる。また、平成27年度の介入研究結果を学会で発表するため、協同研究者との打ち合わせや、学会参加のための交通費や参加費、交流集会でのプレゼンテーションのためのノートパソコンとポータブルプロジェクターの購入を予定している。更に、平成28年度の新人看護師を対象として、新人教育プログラム(改善版)の実施と評価のために、調査票の印刷や分析にかかる費用、交通費などを予定している。平成28年度末には、本教育プログラムのマニュアルを整備してホームページ上に公開し、広く公開することを予定しているため、ホームページ開設にかかる予算を予定している。
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