2013 Fiscal Year Research-status Report
ホルモン治療中の乳がん女性のためのセルフトリートメント支援システムの評価
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25670954
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | St. Luke's College of Nursing |
Principal Investigator |
飯岡 由紀子 聖路加国際大学, 看護学部, 准教授 (40275318)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | がん看護学 / 乳がん / ホルモン治療 / ランダム化比較試験 / 評価研究 |
Research Abstract |
本研究は、ホルモン治療中の乳がん患者を対象としたセルフトリートメント支援システムを評価することと、本システムの一般化に向けたシステム構築を目的としている。セルフトリートメント支援システムは、先行研究の結果を元に、3つの特徴(ホルモン治療の副作用や生活上の不便が簡便にパソコンに登録できること、結果が1枚のシートで出力されること、生活に役立つビデオが閲覧できること)を備えたものとして開発した。 このシステムを行う対象者を介入郡に、通常ケアを行う対象者を対照郡として、ランダム化比較試験による研究計画を立案した。対象者の適格条件は、タモキシフェン治療を開始して3ヶ月~2年未満であり、20~50歳未満で、自宅でMicrosoft Excelが使用できることとした。除外基準は、登録時再発・転移がある、精神疾患の既往があることを設定した。予定サンプル数は、Jacob Cohenによる効果量の大きさの基準や既存研究の脱落率を参考にして1郡72名とし、全数は150例と算出した。介入内容は、セルフトリートメント支援システムの3ヶ月間の使用とした。アウトカム指標は、基礎情報、知識尺度、心理的well-being尺度、QOL尺度などを測定することとし、介入前、介入後、介入1ヵ月後で測定することとした。データ収集期間は1年間を設定した。倫理的配慮としては、USBに内蔵される本システムは、USBの紛失による情報漏洩の危険性が予測されたため、USBには個人情報は一切含まないよう設定した。またPCの故障などの物損が予測されるため、研究代表者が介入する保険で対応するよう調整した。その他、対象者の任意性の保持、情報管理体制の整備などを徹底した。 以上の研究計画を研究者所属施設及びデータ収集施設の研究倫理審査委員会にて審議し、承認を受けた。2014年1月からデータ収集を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画通り、ランダム化比較試験を開始できている。更に、研究協力施設の協働によりデータ収集は順調に経過しており、対象者数は1ヶ月で20名程度は確保できている。脱落率は10%未満であり、このままデータ収集を継続すると、予定したデータ収集期間内に予定のサンプル数を確保できると予測される。 一方で、セルフトリートメント支援システムが適応できない事象(パソコン機種とシステムの不適応、パソコンのオペレーションシステムとの整合性など)が、対象者の選定に予測以上に影響していることが明らかとなった。更にセルフトリートメント支援システムの不具合が10件以上で生じている(作業を繰り返す際の不具合など)。システムエンジニアと共に原因究明を行うと共に、対象者への対応を行っている。 以上から、データ収集は順調に行われているが、システムの運用上に少しトラブルも生じていることから、「おおむね順調に進展している」と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
データ収集は、リサーチアシスタントによるリクルートのプロセスが確立してきたので、安全性・確実性を確保しながら、研究協力施設にて2014年12月末まで継続する。また、セルフトリートメント支援システムのシステム上の不具合などは、システムエンジニアへの協力により原因究明に努める。対象者との連絡方法は、メールまたは電話での対応をしており、この連絡調整方法を継続する。 データ収集が終了した後、統計ソフトSPSS及びAMOSを用いて統計分析を行う。データは記述統計を算出し、分析計画を立案する。アウトカム指標の郡間の有意差の検定においては、ITT分析を用いて、対応のあるT検定にて検討する。分析結果に応じて、システムエンジニアによるシステム修正を行う。 更に、このセルフトリートメント支援システムの一般化に向けて、Web上での運用ができるシステムを構築する。現在は、Microsoft Excel(Office 2007以上)上での運用であり、利用者が限られている。対象者が場所を問わずに入力や閲覧が可能となるなど、より効率性や汎用性を高めるために、Web上での運用は望ましいと考えている。だが一方で、情報漏洩の危険性が高まるなどの安全上の課題がより大きくなる。これらの課題を踏まえたシステム構築を行う必要がある。 そして、研究成果はタイムリーに公表するため、関連学会の発表を行う。ホルモン治療中の看護が十分に発展していない我が国の現状において、乳がん看護の発展に寄与するものと考える。更に、関連学会での最新の知見の収集や、研究課題を共有する研究者との情報交換は、有益な示唆が得られると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
セルフトリートメント支援システムの安全性確保のため、開発したシステムを再度システムエンジニアが調整し直す必要があり、研究計画立案の時期が当初よりも延期となった。更に、研究計画の立案時には、研究協力施設との調整(研究の実現可能性を含めた検討)により、計画の見直しをする時間を要した。これらのプロセスを経過した後、研究代表者施設と研究協力施設と2箇所の研究倫理審査を踏まえたため、研究開始時期が当初の計画よりも延期された。研究は計画した内容で開始されたのだが、開始時期が延期したため、初年度には対象者への研究協力に対する謝礼支払いが全く行われておらず、謝金等の支出でかなりの減額があった。 更に、連携研究者の研究成果の学会発表に関して交通費や学会参加費を計上していたが、連携研究者の都合で学会参加が不可能となり、参加費や交通費の支出が抑えられている。 以上の理由より、本年度使用額が減額されるに至った。 研究対象者(150名を予定)への研究協力に対する謝礼を支払う。また、対象者リクルート専任のアルバイトを雇用したため、アルバイト者への謝金をが計上される。 次年度も学会にて研究成果の報告を予定している。連携研究者の参加を予定しており、交通費及び参加費の支払いを予定している。 更に、セルフトリートメント支援システムは事前にシステムエンジニアによる調整を行ってはいるが、データ収集中の不具合なども発生してきている。原因究明や適宜のシステム調整が必要となるので、システムエンジニアへの業務委託費を計上している。
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