2014 Fiscal Year Research-status Report
パートナーからの暴力被害妊婦の周産期アウトカム改善に向けた新ケアプログラムの開発
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25670964
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松崎 政代 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40547824)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 看護学 / 医療・福祉 / 妊婦 / 暴力 / 生活習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 概要:平成26年度は,パートナーからの暴力(Intimate Partner Violence:IPV)被害妊婦の生活習慣・精神的健康度の実態と周産期アウトカムへの影響を調査した.
2.研究成果:平成25年7月~平成26年7月に都内病院1施設の外来で,830名の妊娠末期の妊婦を対象に,自記式質問紙・診療録を用いた3時点(妊娠末期・産後直後・産後1か月)での縦断観察調査を行った.IPV被害妊婦とIPV被害がない妊婦の生活習慣(栄養素摂取量, 睡眠の質,飲酒・喫煙状況,健康関連QOL(Quality of Life)と精神健康度(抑うつ・不安)を比較するために,t検定またはχ2検定を用い解析した. その結果,IPV被害妊婦(n=49)は,IPV被害がない妊婦(n=725)に比べて,ビタミンB6(p=.02)・ビタミンC(p=.05)の摂取量が少なく, 起床後の疲労(p=.001)が強く,全体的健康感(p=.003)・日常役割機能 (身体)(p=.05)・活力(p=.001)・心の健康(p<.001)・日常役割機能(精神)(p=.01)・社会生活機能(p=.003)が低く, 体の痛み(p=.04), 妊娠中の飲酒(p=.01), 抑うつ (p<.001)・不安 (p<.001)があることが明らかになった.更に,妊娠期のIPVと周産期アウトカムとの関連とその影響要因に関して共分散構造分析を用い解析した結果, 妊娠期のIPVは産後うつ症状(p<.001)と有意な関連が見られ, その関連には妊娠期のうつ症状(p<.001)が影響したことが明らかになった.本結果から,周産期医療現場でのIPV被害妊婦に対する栄養,睡眠,QOL,精神的健康度を改善させる包括的なケアプログラムの必要性と,特に産後の精神的健康への影響を考慮した妊娠期の精神的ケア介入の重要性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の26年度の計画は,妊娠期から産後1か月の縦断観察調査の実施・分析,論文作成であった.現時点で縦断観察調査は終了しており, 論文をまとめている.またその調査結果から,IPV被害妊婦に対するケアプログラム開発に向けて,現在ケアプログラム内容を検討していることから,概ね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
IPV被害妊婦のケアニーズをより反映した周産期ケアプログラムを開発するために,妊娠期にIPV被害を経験した女性50名を対象に,自記式質問紙を用いた横断観察調査を実施し,IPV被害女性の産科医療現場での相談状況やケアニーズを把握する.その調査結果や産科学・助産学・IPVの専門家との意見交換により,産科医療施設で行う効果的で実現可能性が高いIPV被害妊婦に対するケアプログラムの理論や具体的な内容を検討する.開発した周産期ケアプログラムに関しては,平成27年9月頃に,産科医師や助産師10名を対象にしたフォーカスグループインタビューを行い,臨床現場で実施できるように改変し実用化を目指す.また今年度実施した縦断観察調査の結果に関しては,論文を執筆し学術雑誌に投稿予定である.
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Causes of Carryover |
平成26年度は平成26年7月に目標人数に達し調査を終了し, 調査終了後はデータの解析やIPV被害妊婦に対する効果的なケアプログラム開発のための準備期間とした. 平成27年度は, 平成26年の調査データを基にIPV被害妊婦に対する周産期ケアプログラムの構築のために, IPV被害女性に対する追加調査や産科医療者へのフォーカスグループインタビューの実施を計画している. 助成金を使用することで, IPV被害妊婦のニーズに合った効果的で実践的なケアプログラム開発に向けた調査と解析等が遂行できる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前期:妊娠期にIPV被害を経験した女性に対する横断観察調査を予定しているため,それに伴う質問紙の印刷代,対象者への謝礼,切手代,調査旅費等が必要である. 後期:開発した周産期ケアプログラムのプロセス評価のためにフォーカスグループインタビューを予定しており,それに伴う対象者の謝礼,調査旅費,研究補助者(テープ起こし)の給与,解析ソフト(質的分析)代が必要になる.更に成果発表のために,論文の英文校正代,投稿費,国際学会への参加旅費等が必要である.
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