2013 Fiscal Year Research-status Report
センサ装着を意識させずに食物の飲み込みを検出する技術開発への挑戦的研究
Project/Area Number |
25670992
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中島 一樹 富山大学, 理工学研究部(工学), 教授 (50207776)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 要介護高齢者 / 飲み込み / センサ |
Research Abstract |
高齢者人口の増加に伴い、要介護度の高い介護施設の利用者数が年々増加している。また介護度の高い利用者が増加する中、介護現場ではいかにして安全で安楽な介護技術を提供するかが重要な課題である。その解決にはケアスタッフの介護技術力の向上と共に介助機器の活用も選択肢の1つであり、スタッフと利用者双方にとって利便性の高い介助機器の開発が必要である。これまでの研究で特別養護老人ホームのケアスタッフは、食事介助に困難感を持っていることを明らかにした。特別養護老人ホームや家庭などの居住場所は、病院の検査室ではなく生活空間であるので、本人だけでなく第3者からの見た目にも配慮を必要とする。そこで本研究では、安心で効率的な食事介助を実現するために、要介護高齢者が食事時に必ず使用するエプロンに着目し、エプロンに内蔵できるセンサを開発する。これを用いれば、エプロンを着用するだけで飲み込みを検出するセンサの装着が完了する。本研究では被介護者にセンサ装着を意識させず、飲み込みを検出するセンサ技術開発に挑戦する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画書では筋電図により飲み込みの検出を予定していたが、予備研究により特に高齢者での検出が困難であることが明らかになった。そこで筋電図に加えて加速度も同時に計測し、どちらの手法が有利であるかを以下のように検討した。 顎二腹筋の筋電図と加速度は安静時と飲み込み時の両方を測定し、飲み込み時刻を特定するために筋電図と加速度の二乗平均の積分値(iERMS、iARMS)を算出した。健常成人男性8人にプリン2gとプリン10gをそれぞれ飲み込みさせた。飲み込み時におけるiERMSとiARMSはそれぞれ安静時よりも有意に大きかった。また、特別養護老人ホームの高齢者にはいつもの昼食を食べてもらい、iERMSとiARMSを得た。飲み込み時におけるiERMSとiARMSは、若年者と同様に安静時よりも有意に大きかった。 筋電図や加速度のRMS値において、ある閾値を設定すれば容易に安静時と飲み込み時を判別できた。高齢者においても若年者と同様に筋電図波形、加速度波形ともに飲み込み時のほうが統計的にも有意に大きな結果が得られた。しかし、高齢者の筋電図、加速度波形には飲み込み時以外にも大きな反応が多数得られた。若年者と異なり、高齢者では筋電図と加速度のRMS値からある一定の閾値を設定することで、飲み込み時の判別は容易ではないと考えられる。さらに、筋電図センサや加速度センサのセンサ取り付け位置の皮膚のたるみや振戦により、安静時のデータを安定して取得することが容易でないことも明らかになった。また、高齢者の場合は食物を口に入れた後、そのまま飲み込みをする場合や咀嚼しながら飲み込みする場合など、同一被験者の飲み込みでも複数のパターンがあった。 このような理由により研究に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
総合的に検討した結果、筋電図に比べて加速度で得られる信号は、高齢者であっても安定して飲み込みの判定を自動的に行う場合に有利であると考えられる。次年度には飲み込みの検出を筋電図センサから加速度センサに変更し、ほとんどの要介護高齢者で安定して飲み込み検出を行えるようにするため、加速度センサの開発と取得データの解析に研究費を使用する。そして(ア)ケアスタッフに光や音など、どのように飲み込みを知らせるか、(イ)センサ機能をエプロンの中にどのように違和感なく収めるか、を検討・開発する。(ウ)飲み込みセンサシステムを試作により開発する。さらに(エ)特養にて飲み込みセンサシステムをフィージビリティスタディにより評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画書では筋電図信号で食物などの飲み込みを検出することを予定していた。しかし、研究の実施により若年者や要介護高齢者の一部で良好に得られる筋電図信号が、多くの要介護高齢者では得られないことが明らかとなった。一方、加速度信号を利用すれば、要介護高齢者でも若年者と同様に良好な信号が検出できることが明らかになった。このように研究計画書と異なるセンサを用いる必要が生じたため研究計画に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。 総合的に検討した結果、筋電図に比べて加速度で得られる信号は、高齢者であっても安定して飲み込みの判定を自動的に行う場合に有利であると考えられる。次年度には飲み込みの検出を筋電図センサから加速度センサに変更し、ほとんどの要介護高齢者で安定して飲み込み検出を行えるようにするため、加速度センサの開発と取得データの解析に研究費を使用する。そして(ア)ケアスタッフに光や音など、どのように飲み込みを知らせるか、(イ)センサ機能をエプロンの中にどのように違和感なく収めるか、を検討・開発する。(ウ)飲み込みセンサシステムを試作により開発する。さらに(エ)特養にて飲み込みセンサシステムをフィージビリティスタディにより評価する。これらのセンサ開発・データ処理およびシステムの評価に研究費を使用する。
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Research Products
(4 results)