2015 Fiscal Year Research-status Report
自殺企図後のうつ病者を「生への意欲」につなげる看護アプローチ
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25670993
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長田 恭子 金沢大学, 保健学系, 助教 (60345634)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | うつ病 / 自殺 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国は依然として自殺が社会問題となっており、「うつ病」と「自殺未遂」は自殺の最重要危険因子であるとされている。本研究は、自殺企図を行ったうつ病あるいは双極性障害をもつ者を対象としてナラティヴ・アプローチを基にした面接を継続的に行い、彼らが希死念慮を緩和して「生への意欲」を取り戻す過程における語りの変化を明らかにすること、またその過程における研究者の関わりを明らかにすることを目的として開始した。そのことにより、うつ病や双極性障害をもつ者の希死念慮の改善、自殺予防につながる看護介入を見出せると考えた。 条件を満たす対象者を確保することは困難であったため、前年度から引き続き、データ収集と並行してデータ分析を行った。数名とナラティヴ・アプローチを用いた非構造化面接を行い、面接が継続できた者や気持ちの変化、希死念慮が緩和し生きることへの肯定的な気持ちがみられた者を対象者とした。 その結果、参加者の語りは、死への執着があり不安や孤独感が強い時期である【死への執着】【自殺前と変わらない孤独感】【先がみえない不安】【現実に直面することによる自信喪失】から、生きることを肯定し始めた時期である【生きることに気持ちが向く】【生への意欲の芽生え】に変化したことが明らかになった。研究者の関わりとしては、【気持ちや考えを表現できるようにゆっくり待つ】【長期間にわたる苦労や努力を労う】【参加者のこれまでの経過や現在の気持ちを理解できるように詳細に聴く】【別の見方や客観的な見方を伝えるために研究者の考えを伝える】【研究者自身の経験や悩みを伝える】【参加者の気持ちや家族の立場を代弁する】【行動変容できるよう研究者の考えを伝える】【参加者が変化していることやできていることを自覚できるよう問いかける】【笑顔や軽い笑いを交えて楽しく会話する】の9のカテゴリーが抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画においては、平成25~26年度にかけて、協力施設の師長や担当医師を通して対象者を確保し、面接を継続してデータ収集を行う予定であった。しかし予想以上に対象者の確保が困難であったため、27年度においてもデータ分析と並行としてデータ収集を行うこととしていた。そのため研究全体の遂行が遅れており、補助事業期間を1年度延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間を1年度延長し、最終年度となる。データ分析をまとめ、対象者の語りの変化やその時の看護者の関わりについて明らかにしたいと考える。研究成果をまとめ、論文作成、論文発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究対象者の確保に時間を要し、データ収集が予定通りに進まなかった。そのため研究全体の遂行が遅れ、研究打ち合わせ旅費や謝金、会議費等の項目において、予定通りの執行ができなかった。また学会発表を計画し、エントリーしていたが、やむを得ない事情によりキャンセルすることとなった。そのため旅費や学会発表にかかる支出も次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度はデータ分析を進め、研究成果をまとめる予定である。論文作成、論文発表を行うため、連携研究者との打ち合わせ、精神看護学および質的研究のエキスパートからのスーパービジョンを受けるための会議費、専門知識の提供、研究資料収集のための謝金等に使用したいと考える。また研究結果報告のための学会参加費や雑誌投稿料として使用予定である。
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