2013 Fiscal Year Annual Research Report
代謝ネットワークから解き明かす生物-環境相互作用:解析基盤の確立と応用
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25700030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹本 和広 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (40512356)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ネットワーク理論 / 代謝ネットワーク / 数理モデル / 微生物生態 / 進化 |
Research Abstract |
本研究課題では、申請者がこれまでに構築してきた代謝ネットワークの解析法と、それに基づいて見いだされてきた生育環境との相互作用の知見に基づき、種間相互作用の抽出・定量化を可能とするための解析基盤を確立させる。 特に、本年度では、理論とデータ整理において以下のような実績をあげた。 【理論】代謝能力(Scope)を確率論的に定量化するための理論的枠組みを拡張した(Takemoto et al., 2013)。具体的にこれまでの理論では単一の入力(栄養や遺伝子摂動など)しか取り扱うことができなかったが、複数の入力にも対応できるようにした。このScopeを応用し、任意の代謝ネットワークから栄養素を見つけ出すアルゴリズムのプロトタイプを構築し、Web Server(限定公開)として実装した。また、この手法で抽出された種間相互作用の機能を特徴付けるため理論を構築した(投稿中)。 【データ整理】H27以降の応用を円滑にするため様々なデータを集めた。1)微生物の生育環境情報を整理した。特に酸素要求性に注目した。このデータを応用し、代謝ネットワーク進化における酸素の影響について興味深い結果を得たので報告した(Takemoto & Yoshitake, 2013)。2)医療分野への応用も視野に入れ、疾病に関するデータ(がん患者の死亡率)についても整理した。このデータから、シグナルネットワークの構造と死亡率の関連を見いだしたので報告した(Takemoto & Kihara, 2013)。3)食物網や送粉系についてのネットワークデータやそれらの地理学情報についてもまとめた。このデータから興味深い結果を得たので、論文にまとめて投稿した。 【その他】学術雑誌に総説(依頼)(竹本, 2014a; 2014b)を提供し、代謝ネットワーク分析の重要性を啓蒙した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ整理からは予定された以上の結果を得ることができた。これに加え、種間相互作用の機能推定のための理論についても予定よりも早く構築することができた。これらの点に注目すれば、計画以上に進展しているといえる。しかしながら、これらの成果をまとめるために時間を要したため、アルゴリズムの構築が若干遅れている。プロトタイプは完成したものの、計算時間の問題が依然として残されたままである。 そのため、達成度は相殺されると考え、上記のような自己評価を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、基本的には当初の研究実施計画通りに進める。ただ、以下に記載されるように、いくつかの点において前後する作業がある。 特に、H26年度はアルゴリズムの実装に特に重点をおく。計算時間の問題についてはいくつかの近似アルゴリズムの候補を既に選定しており、これらについて検証を行う。また、能力の高い研究補助者を予定よりも早く雇用できたため、データ整理やソフトウェア構築といった関連する研究計画を優先的に取り組む。 微生物の生育環境データベース(DB)に関して、類似のDBが2013年9月に別チームによって発表された(http://bacdive.dsmz.de)。ただ、このDBはバクテリアのみが利用可能で、代謝との関連などを含め横断的な研究には使いづらい。本研究課題で構築するDBではこの点をすることで既存DBと差別化する。 データ整理から予想外の興味深い結果が得られたことに加え、実応用に関連したよい共同研究者とめぐりあうことができた。そのため。H27年度以降で予定されていた応用についても前倒して取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究補助者を予定よりも早く雇用することができ、次年度における雇用経費を確保する必要があるため。 具体的に、物品費(基金分)の次年度への繰り越し、H27年度基金分からの前倒しで雇用経費を確保する。なお、予算のスケジュールがシフトするだけなので、研究遂行に支障は生じない。
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Research Products
(10 results)