2014 Fiscal Year Annual Research Report
代謝ネットワークから解き明かす生物-環境相互作用:解析基盤の確立と応用
Project/Area Number |
25700030
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹本 和広 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (40512356)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ネットワーク理論 / 代謝ネットワーク / 数理モデル / 生態学 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、大規模な生物データから、生物-環境相互作用の抽出と定量化を可能にするための解析基盤を確立させ、応用する。 特に、本年度は、データ分析と理論において以下のような実績をあげた。 【データ分析】海外のグループと協力し、の種間相互作用ネットワーク(食物網や送粉系のような共生ネットワーク)のデータ(約400)を収集した。研究支援員や学生と共同で、文献情報から観測地の位置情報(緯度・経度)を抽出し、整理した。これらのデータを用いて、ネットワーク構造と地理学パラメータとの関連を調査し、気候の季節変動性がネットワーク構造と関連することを見出した(Takemoto et al., 2014)。 また、研究支援員と協力して代謝反応情報の整理を行った。更新されたデータを用いて、「代謝ネットワークのフラクタル性(自己相似)」に関する論争について取り組んだ。結果として、代謝ネットワークのほとんどは自己相似性を示さないことを見出した(Takemoto, 2014)。 【理論】研究支援員と協力して、共生ネットワーク(種間相互作用)の安定性を分析するための理論を構築した(Feng and Takemoto, 2014)。「ネットワークの入れ子構造が生態系安定性の増加に貢献する」という定説が誤りであることを示した。 また、生態系分析においては代謝速度(酸素やエネルギーの消費速度)も重要であることから、代謝速度と体サイズのアロメトリー則(3/4乗則)の問題についても取り組んだ。代謝速度をに関するMembrane pacemaker仮説は観測事実との食い違いから疑問視されていたが、細胞不均一性を考慮することでその問題が解決されること示した(Takemoto, 2015)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ整理は順調に進み、それらのデータを応用して、生態系や代謝についての興味深い知見を複数引き出すことができた。特に生態系ネットワークの観測地情報のデータはデータ量の側面から世界をリードしているといえる。代謝ネットワークデータも他の研究者から広く使われている。 理論に関しては、研究支援員の協力で、予定されていた種間相互作用ネットワークの分析手法を完成させることができた。これを応用することで、生態系における群集構造と安定性に関するある論争を解決することができた。また、代謝速度のアロメトリー則の理論を構築し、興味深い仮説を得ることができた。これは、生態系評価に重要な代謝速度の推定に応用できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、基本的には当初の研究実施計画通りに進める。ただ、以下に記載されるように、いつくかの点において前後する作業がある。 特に、次年度は生態系ネットワーク分析と代謝速度推定手法の開発を優先して行う。今年度得られたデータを応用することで既に、予備的ではあるものの、興味深い結果が得られている。 よい共同研究者とめぐりあうことができたため、H27年度以降に予定されていた実応用が、H26年度からスタートした。引き続き注力する。
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Causes of Carryover |
いくつかの物品について予定されていたよりも安く購入することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、書籍や消耗品の購入などにあてる。
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Research Products
(7 results)