2013 Fiscal Year Annual Research Report
ビスフェノール低用量効果はタンデムに並ぶ核内受容体が誘起する
Project/Area Number |
25701008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松島 綾美 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60404050)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子認識 / 人体有害物質 / 内分泌撹乱物質 / リスク評価 / 構造活性相関 / タンパク質 / 受容体 / 生理活性物質 |
Research Abstract |
申請者らはこれまでに、有害環境化学物質・新世代ビスフェノール・AFが、エストロゲン受容体α型に非常に強く結合し、活性化するアゴニストとして働くが、β型には活性を阻害するアンタゴニストであるという意外な新発見をした。さらに最近、ERαの活性は、ビスフェノールAにより、名前は似るが全く別の受容体であるエストロゲン関連受容体γ型が存在すると約20倍も増強される新奇な現象を見出した。これまでの緻密な転写活性試験と立体構造解析に基づき、「DNA上のタンデムなER応答配列に複数の核内受容体が結合し、互いの転写因子複合体に影響することによる、いわば『転写協同制御』がビスフェノール低用量効果の本質である」と考えられた。そこで本研究では、これら分子メカニズムの解明を目的とする。 そのために、3年計画の初年度となる本年度は、培養細胞HeLa細胞で特に活性増強作用が強かったことから、TD47、MCF7など様々なエストロゲン受容体発現細胞において、エストロゲン受容体α型とβ型、さらに、エストロゲン関連受容体α型、β型、γ型のmRNA発現量をリアルタイムPCRで解析した。加えて各種転写因子などのmRNA発現量もリアルタイムPCRで解析した。さらに、これらに対するビスフェノールA暴露の影響を解析した。ビスフェノールAの暴露により、複数の受容体の発現量に変動が見られた。さらに、エストロゲンα型とβ型の細胞内局在解析実験のための発現プラスミドの構築を終了した。一過性発現により、その細胞内局在解析を現在実施中である。こうしてERαとERβの応答差異の分子メカニズム解明のための研究を順調に進展させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、概ね計画通り順調に進展している。核内受容体が結合するDNA上のプロモーター部位として、人工的に設計された受容体応答配列(エストロゲン受容体応答配列)に対するエストロゲン受容体α型およびエストロゲン関連受容体γ型の転写活性化能の試験を実施した。細胞の種類に応じて、その増強活性に変化が見られるかの比較解析に成功した。この増強活性が細胞内の各種核内受容体や転写関連因子に依存する可能性を考え、計画段階では考慮していなかったこれらの因子の発現量解析を詳細に実施し、基本データの取得に成就した。また、今後は生体に存在する配列を用いた試験も行う予定であり、これらについては現在Caspase7とオキシトシンのプロモーター部位配列のクローニングを順調に進行中である。 加えて、ゲルシフトアッセイにより、核内受容体とエストロゲン受容体応答配列の結合を直接検出するために、現在、応答配列の選択を実施している。核内受容体の抗体を用いて、特異的な応答配列との結合を保障するためのスーパーシフトアッセイに利用できる抗体の選択も予備的実験により無事に終了した。このように、ゲルシフトアッセイによる結合解析も順調に推移している。 唯一、エストロゲン受容体α型およびエストロゲン関連受容体γ型の同時発現系における転写因子複合体の単離実験の実施が遅れている。これは実施計画を再検討し、より確実に複合体を取得できる方法を考慮しているためである。 また、平成26年度に実験予定であったエストロゲン受容体β型の新世代ビスフェノール依存的細胞内局在解析のための、緑色蛍光タンパク質融合型のエストロゲン受容体β型の発現プラスミドの作成を前倒して終了した。 このように本研究は順調に推移しており、現在のところ特に問題点はない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成25年度に作製が終了した緑色蛍光タンパク質融合エストロゲン受容体β型の新世代ビスフェノール依存的細胞内局在解析を解析する。これまでに、エストロゲン関連受容体γ型を発現することによりエストロゲン受容体α型の活性増強作用が確認されているヒト子宮頸癌培養細胞HeLaおよびアフリカミドリザル腎臓細胞CV-1をまず用いる。同様に、エストロゲン受容体α型についても解析を実施する。さらに、新世代ビスフェノール添加後の細胞内局在変動をタイムラプス(連続画像)解析する。こうして、エストロゲン受容体α型、β型、さらにエストロゲン関連受容体γ型の細胞内局在を解析し、局在場所が新世代ビスフェノールによりどのように変動するかについて詳細なデータを得る。 また、これまでに幼若ラット脳におけるエストロゲン関連受容体γ型の発現部位を、抗エストロゲン関連受容体γ型抗体を用いて詳細に解析した。これはきわめて特異性の高い抗体が得られたために初めて可能となった。既に、エストロゲン受容体α型、β型およびエストロゲン関連受容体α型、およびβ型についても特異性の高い抗体を取得している。そこで、これらの抗体を用いたラット脳における発現部位解析も検討する。 そして、エストロゲン受容体β型のリガンド結合部位を大腸菌を用いて発現し、新世代ビスフェノールとの結合体の結晶作製に取り組む。既に発現系の最適化は終了している。結晶ができない場合に備えて、統合科学計算システムMOEを用いたドッキングシミュレーションに取り組む。こうして、エストロゲン関連受容体γ型の活性増強機構に迫る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
発注していた試験用の試薬の納品が遅れた。そして、最終的には「合成不良のため出荷できない」という連絡があったため、次年度使用金が233,068円発生した。そのため、代わりの試薬を検討している。実験計画に変更や、大きな遅れなどの問題は生じていない。 代わりの試薬を検討し、購入する予定である。直接経費次年度使用額は全て試薬代として使用し、実験に用いる。
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Research Products
(35 results)
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[Journal Article] Specific Role of Phe Residues in Opioid Peptide Met-enkephalin- Arg-Phe in Binding to All Three Opioid Receptors.2014
Author(s)
Motomatsu, Y., Nishimura, H., Matsumoto, Y., Inamine, S., Kuramitsu, Y., Matsushima, A., and Shimohigashi, Y.
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Journal Title
Peptide Science
Volume: 2013
Pages: 317-318
Peer Reviewed
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[Journal Article] Structure-activity Studies on the Halogenated Phe-containing Neuropeptide Substance P Analogs.2014
Author(s)
Kuramitsu, Y., Nishimura, H., Nakamura, R., Suyama, K., Matsushima, A., Nose, T., and Shimohigashi, Y.
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Journal Title
Peptide Science
Volume: 2013
Pages: 319-320
Peer Reviewed
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[Journal Article] Functionally Essential Amino Acid Residues in ORL1 Nociceptin Receptor for Ligand-stimulated Receptor Activation.2014
Author(s)
Nishimura, H., Li, J., Isozaki, K., Abe, Y., Inamine, S., Matsushima, A., Costa, T., and Shimohigashi, Y.
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Journal Title
Peptide Science
Volume: 2013
Pages: 333-334
Peer Reviewed
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[Journal Article] Expression and Mutation Analyses of Brain Neuropeptide Genes of Rndocrine-disrupting Bisphenol A-exposed Hypoactive Mouse.2014
Author(s)
Sugiyama, M., Matsuo, A., Saito, T., Uchimura, E., Liu, X., Matsushima, A., and Shimohigashi, Y.
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Journal Title
Peptide Science
Volume: 2013
Pages: 453-454
Peer Reviewed
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[Journal Article] Influence Analysis of the Circadian Evening Pacemaker Neuropeptide hugγ Gene in the Bisphenol A-exposed Fruit Fly Drosophila Brain.2014
Author(s)
Umeno, S., Matsuo, A. , Matsuyama, Y., Nakamura, M., Takeda, Y., Sumiyoshi, M., Liu, X., Matsushima, A., Shimohigashi, M., and Shimohigashi, Y.
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Journal Title
Peptide Science
Volume: 2013
Pages: 455-456
Peer Reviewed
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[Journal Article] Bisphenol A-induced Epigenetic Mutations in Circadian Pacemaker Neuropeptide mRNAs of Hyperactive Drosophila Fruit Flies.2014
Author(s)
Matsuo, A., Umeno, S., Matsuyama, Y., Nakamura, M., Takeda, Y., Sumiyoshi, M., Liu, X., Matsushima, A., Shimohigashi, M., and Shimohigashi, Y.
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Journal Title
Peptide Science
Volume: 2013
Pages: 457-458
Peer Reviewed
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