2014 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄障害後の代償神経システム構築に着目する新たな運動機能回復戦略
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25702033
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
中島 剛 杏林大学, 医学部, 助教 (60435691)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経システム再構築 / 錐体路 / 可塑性 / ヒト脊髄介在ニューロン / 上肢運動機能 / 神経リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、障害後の脳から脊髄への運動系下行路システムの再構築を見据えた、神経リハビリ法の開発を目指す。特に、脊髄障害後の代償機構の主役となりうる「脊髄介在ニューロン」に焦点を絞り、この神経回路の可塑性を生じさせる方法論について検討することを目的とする。
25年度(昨年度)は、ヒト脊髄介在ニューロンのシナプス効率の長期増強を引き起こす訓練法の開発を試みた。その結果、運動野と末梢神経の刺激効果が頸髄介在ニューロン上で加重する刺激間隔を用い、両者の組み合わせ刺激(RCS)を繰り返すと、RCS終了後も運動野単独刺激による近位筋への錐体路興奮が、60分間程度、増強した。また、これらの効果は、RCS中、弱い筋収縮を伴った場合のみ長期増強を引き起こした。しかしながら、脊髄障害患者では、四肢麻痺により、運動遂行が困難な場合も多く、臨床場面において筋収縮を伴うRCSを遂行できない可能性が高い。 そこで26年度(本年度)は、麻痺筋への錐体路長期増強を誘導できる介入方法について検討した。今回、可塑性誘導の標的となる脊髄固有ニューロン系(PNs)は、近位筋ばかりでなく、手指筋の運動ニューロンに対してもその神経結合を持つことが、動物実験によって示されている。本研究は、これらの神経結合を利用して、機能が残存している筋(近位筋等)を収縮させ、PNsに長期増強を誘導し、麻痺筋(遠位筋等)への錐体路伝達効率を高めようとする試みであった。その結果、近位筋(上腕二頭筋)を収縮している間、RCSを行った場合、安静状態にあった手指筋群の錐体路興奮も、近位筋と同様に長期増強を引き起こした。 これらの結果は、機能が残存している筋が収縮可能であれば、RCSによって、手指筋への錐体路、特に、間接経路の伝達効率を増強させることが可能であることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度(26年度)における麻痺筋への脊髄可塑性誘導法の開発については、おおかた、脊髄損傷者や頚髄症患者等へ応用できるプロトコルまで完成した。あとは最終年度(27年度)に行う、患者への適応可能性を探るのみである。よって、当初計画していたよりも早いペースで研究が進んでおり、おおむね順調に伸展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1)当該研究において開発した可塑性誘導法が上肢運動機能をどの程度、向上および回復させるか、2)実際、頚髄症患者等の実験参加によって、臨床場面への適応可能性を探ること、の2点に焦点を絞り、研究を遂行する予定である。26年度より、これら計画に向けた準備等(施設面や連絡体制の強化など)を着々と進めており、すぐにでも実験を遂行できる環境にある。よって、最終年度(27年度)、更に当該研究を推進できるよう、努力していく所存である。
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Causes of Carryover |
27年度に企画している研究において、実験機材の購入が必要となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度の一部基金分と27年度の一部補助金を合わせて、物品購入に充てる予定である。
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