2013 Fiscal Year Annual Research Report
意識下学習を活用したロボティック・リハビリテーション手法の開発と検証
Project/Area Number |
25702034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
牛場 潤一 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00383985)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ロボティック・リハビリテーション / 脳機能イメージング / 運動学習 / 脳卒中片麻痺上肢 / 治療機器 |
Research Abstract |
実施計画に基づき、今年度の前半は、反復リーチング運動に対して、平行あるいは反平行な力場をロボットに生成させるプログラムを作成した。まず、上肢運動制御ロボットKINARM(b.kin 製)を学内予算によって購入し、リアルタイム制御に実績のあるソフトウェアSimulink、StateFlow、ならびにRealTime Workshopを用いて一連のタスクを組み込んだ。被験者に与えられる力場は、被験者に気づかれないように、僅かずつ増加させるもの(Scott et al.,Nature 2011)と、そのコントロール課題として、平均力場は同じものの、試行間分散があるランダム力場を設定した。以上の二条件に基づいてターゲットへの到達運動を繰り返しおこなわせ、被験者が気づかぬまま、内部モデルの誤りが修正されるかどうか、健常成人による実験的検証をおこなった。当初計画では健常成人10名程度としていたが、統計学的検出力を再検討した結果、全18名での実験実施となった。 実験では、無意識下での学習幅が最大になるパラメータ(力場変化率、運動反復回数)を同定するために、さまざまな条件検討を実施した。最終的には、水平面のリーチング運動に関して、前方8cmの地点にターゲットを表示し、左右方向には最大5cm幅で座標変動するものが適切であることがわかった。 本研究の成果の一部は、査読付き国際学術論文雑誌に掲載された(Habagishi et al., Frontiers in Human Neuroscience, 8:92, 2014)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常成人での条件検討は想定以上に進捗があり、その時点で査読付き国際会議論文として掲載に至ったことは意義があったと評価している。一方、年度内には脳卒中片麻痺患者での実験に移る必要があったが、ロボット上では肩関節周りの痙性麻痺が増悪するケースが散見され、現在その対応策を進めている。具体的には被験者取り込み基準の修正、肩関節挙上角の低減などである。ロボットが測定できる関節トルクに加え、表面筋電図(両側上肢の近位遠位の伸筋群・屈筋群、および体幹筋)を計測するシステムは既に構築済みであるため、研究全体としてはおおむね順調に伸展していると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
年度内には脳卒中片麻痺患者での実験に移る必要があったが、ロボット上では肩関節周りの痙性麻痺が増悪するケースが散見され、現在その対応策を進めている。具体的には被験者取り込み基準の修正、肩関節挙上角の低減などである。医師との研究会議を週1回、定期的に開催しており、そのなかで臨床的視点を汲み取りながら、実験条件の修正を進める方針である。 平成26年度は、最も効率よく「無意識的な運動学習」が進むための、ロボット側の負荷/介助量の変更幅、および反復回数を探索的に同定する計画であるが、平成25年度に実施した健常成人での検討が想定以上に伸展しているため、そのノウハウを演繹しながら、脳卒中片麻痺患者での条件決定を進める予定である。したがって、前述の肩関節まわりの痙性麻痺の問題が解決されれば、その後は速やかに進展するものと見込まれる。 また、今後は脳機能イメージング装置内でリーチング動作を可能とする非磁性装置の設計を開始する予定である。装置開発経験のある研究協力者と緊密な議論を通じて、当初予定通り、平成26年度後半に設計と基本実証を終える方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
競争的学内予算の充当と輸入品購入に係る為替変動の影響によって、購入価格が当初より安価におさえられたため。 被験者の発汗が多く、ロボット使用後や筋電計測後に、機器と生体の洗浄が定期的に必要であることが分かったため、次年度使用額を利用して被験者着衣と清浄綿の購入を計画する。
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