2014 Fiscal Year Annual Research Report
陸棲哺乳類の産生する麻痺性神経毒およびプロテアーゼの構造と機能
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25702047
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
北 将樹 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30335012)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 天然物化学 / 神経毒 / 単離と構造 / 生物活性 / プロテアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
有毒哺乳動物である食虫動物トガリネズミおよび絶滅危惧種ソレノドン由来の特異な麻痺性神経毒の構造や機能の解明を目指して、本年度は以下の研究を実施した。 1. ブラリナトガリネズミ顎下腺由来の麻痺性神経毒:顎下腺抽出物の麻痺性神経毒画分について,3つの成分をセミミクロ逆相HPLCにより精製し、それぞれSDS-PAGEより単一のバンドの高純度のタンパク質として精製できたことを確認した。ただしごく微量のため、酵素消化やN末シーケンス解析などでは一次配列に関する情報は得られなかった。現在、溶液内消化と、微量ペプチド成分のMALDI-TOFTOFMS 解析を試みている。 2.生態調査:キューバ共和国にて有毒哺乳類ソレノドンの生態調査と有毒な唾液成分試料の採取を目的としてフィールド調査を行った(2015年3月~4月)。グアンタナモ州、オルギン州にて、これまで調査を全く行っていない山河地域、渓谷地域を中心に広範な調査を行ったが、ソレノドンの捕獲には至らなかった。 3. ソレノドンの唾液に含まれる特異な有毒物質:2013年度までに捕獲・採取した唾液の低分子神経毒成分の分離を検討し、プロテアーゼの一種であるカリクレインが酵素活性の主成分であること、WB解析より他の哺乳類のものと交叉性がみられるプロテアーゼが含まれることを明らかにした。さらに、プロテアーゼ成分のセミミクロHPLC精製と酵素消化、デノボMS/MS解析により、ソレノドン唾液に含まれるカリクレインの部分的なアミノ酸配列(約40アミノ酸残基)を決定し、これが既存の哺乳類がもつカリクレインと高い相同性を示すことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はフィールド調査により絶滅危惧種哺乳類の捕獲には至らなかったが、微量成分の分離精製・構造解析法を駆使して、唾液中のプロテアーゼの同定に成功し、その機能を明らかにできたという点で、期待された成果が得られたと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオアッセイ法を工夫し、生物活性リガンドの発見と構造・機能解明の研究を加速化させる。生態学、電気生理学、遺伝学などの様々な分野の研究者との連携を一層深め、麻痺性神経毒の化学的解明を効率よく進めていきたい。
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Research Products
(20 results)