2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島北辺域における新石器/縄文化のプロセスに関する考古学的研究
Project/Area Number |
25704014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 正宏 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (20431877)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 考古学 / 新石器時代 / 縄文時代 / 国際情報交換 / 日本:ロシア |
Research Abstract |
本研究の目的は、8000~7000年前の日本列島北辺域(アムール下流域-サハリン-北海道)における考古学的文化の変遷過程と配置関係を解明し、これまでよくわかっていなかった域外接触構造や社会構造に関して、具体的に論究することにある。今年度に実施した調査研究は以下の通りである。 1.北海道湧別町湧別市川遺跡発掘調査と調査成果の分析・研究: 7月に2週間、縄文時代早期石刃鏃文化期の集落遺跡である湧別市川遺跡にて、発掘調査を実施した。円形皿状ピット2基、住居床面とみられる生活面2基、不整形ピット3基、楕円形ピット1基と、それら遺構に伴う土器・石器資料が出土した。保存状態の良好な楕円形ピットでは、埋土中から黒曜石製剥片類の集中と土器底部が出土した。これらは、土坑墓に伴う副葬品であるとみられる。調査終了後、研究室で、出土資料の室内整理・分析を行った。出土木炭の放射性炭素年代測定を行い、7500~7300年前という年代が得られた。北海道の石刃鏃文化の遺跡群のなかで、遺構に確実に伴う遺物と年代を初めて提示することができた。多量の石器・土器資料が得られており、次年度も整理を継続して進める必要がある。 2.北海道における縄文時代早期関連資料の調査・研究: 上記1の調査成果との比較検討を行うため、北海道大学所蔵の過去の湧別市川遺跡発掘調査で出土した資料と、帯広市八千代A、大正遺跡群出土資料の観察調査を行った。 3.アムール下流域における新石器時代資料の調査・研究: 1月にハバロフスク地方郷土誌博物館にて、アムール下流域の新石器時代前期遺跡(ヤミフタ、ダリジャ遺跡等)出土遺物の観察調査を行い、本研究課題に関して現地研究者と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
7月に実施した湧別市川遺跡発掘調査では、保存状態が良好な遺物包含層と遺構が検出された。出土遺物は質量ともに豊富であった。非常に良好な結果が得られたことで、北海道オホーツク海沿岸地域における石刃鏃文化の集落遺跡に関する見解を、予想よりはやく得ることができた。その成果に関して、速報というかたちで年度内に学会発表することができた。出土資料の整理は、目下継続して進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
湧別市川遺跡で出土した資料の量は非常に多く、整理作業に時間がかかっている。また土器資料に関しては遺存状況が悪く、保存・復元作業に手間取っている。北海道では数少ない信頼性の高い結果が得られているため、次年度も室内整理と詳細な分析を継続して進める必要がある。単年度で予想を超えた結果が得られたので、次年度は、国内遺跡発掘調査を新たに実施せず、湧別市川遺跡の研究を集中的に行い、日露両国で研究対象範囲を拡大し、関連遺跡と出土資料の調査を行うことにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内発掘調査で出土した資料の量が非常に多く、その整理作業に時間がかかったため、整理・登録が完了していない採取試料の理化学的分析を、十分に進められていない。 今年度に部分的に行っているが、さらに追加・継続する必要のある放射性炭素年代測定、古植生分析、同位体分析などの理化学的分析を行う。
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