2014 Fiscal Year Research-status Report
現代の医療現場における「確かさ」決定のプロセスに関する文化人類学的考察
Project/Area Number |
25704019
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
磯野 真穂 国際医療福祉大学, その他の研究科, 講師 (50549376)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 循環器外来 / 不確実性 / 医療人類学 / 医師-患者関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は①これまでに集めたデータの整理・分析と医療現場での②フィールドワークの実績をもとにした成果発表を行った。①については、循環器外来で近年患者数が増加している心房細動に焦点を当てた。前年度までは患者の語りのみに着目をしていたが、今年度より診療の陪席からデータをもとに、医師の語りも分析に加えた会話分析を開始した。そこで判明したもっとも重要な知見は、医学的には異常が見られない患者の訴えがなされた際、医師と患者の会話の堂々巡りが続き、診療時間が長くなること、およびその循環が始まると医師側の医学的な説明が徐々に長くなる傾向があることであった。本研究の目的に照らし合わせると、医師は患者が主訴として表明する自らの身体の不確実性を医学的な知識で何とか解消しようとするが、その手法が患者の求めているものとずれてしまい、結果診察時間が長引くという事実が判明している。この現象は医師の経験値の中ではよく知られているものであるが、一方でこれが言語化され整理されたことは未だなく、最終年度はこの現象をより明らかにするためデザインを精緻化してゆきたい。一方②に関しては、主に文化人類学者に向けて医療現場でのフィールドワークの難しさとそれを乗り越える方法を発信した。文化人類学者が行う帰納的な手法は、調査に入る前に研究デザインをすべて決めておく必要のある医療における調査はバッティングすることがあり、それを乗り越えるためには、医療側に文化人類学的な調査の利点を周知することと文化人類学者側が医療側の求める短時間でのプレゼンテーションや問題解決の手法を提示するといった努力が必要になることが判明している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
循環器外来の調査は順調であるが、一方でもう一つのフィールドであった漢方外来での調査が遅れている。これは申請者の所属が変わり、新しい所属での職務に時間と労力を割かねばならなかったことに大きな原因がある。
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Strategy for Future Research Activity |
漢方外来での調査が予定より遅れているため、実際の計画より規模を縮し、調査を遂行することを検討している。
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Causes of Carryover |
所属変更に伴い業務が増加し、予定していたフィールドワークが実施できなかったことが原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フィールドワークに伴うテープ起こし、交通費、謝金に当てる予定である。
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