2014 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の経済外交の再検討――高碕達之助文書を中心に
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25705004
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
井上 正也 香川大学, 法学部, 准教授 (70550945)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 経済外交 / 日印関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二年度(平成26年度)は、第一に、前年度に継続して、高碕文書の整理・分析並びに関係者へのヒアリングを行った。第二に、経済外交研究の前提として、前年度に引き続き復興期から1950年代前半にかけての日本経済史に関する先行研究や関連官庁の文書を読み込んだ。具体的には経済安定本部(経済審議庁)の文書を収録した史料集『経済安定本部 戦後経済政策資料』及び『戦後経済計画資料』の収集・読み込みを継続した。また雑誌記事を中心に目録を作成した。第三に、高碕文書の調査と継続して、近年利用可能となった経済外交に関わる私文書の調査を行った。第四に、海外での史料調査を実施しインドのニューデリーにおいてインド国立公文書館並びにネルー図書館での関連文書ならびに書籍の収集を行った。 本年度はとりわけ1950年代の日印製鐵交渉の分析に重点を置いた。海外での収集文書、高碕文書に加えて鉄鋼業界の関連雑誌記事、高碕の構想が政府側にいかに認識され、どのような形で民間構想が政府と交錯したのかを検証した。日印製鐵交渉は世界銀行の外資導入をめぐる最初の事例であり、関西の製鐵業界も関与した案件であった。本稿は、インド鉄鋼業の育成と日本鉄鋼業の発展の両立を目指した高碕構想の内容を解明し、鉄鋼業という視角から戦前から戦後へ、そして満洲からインドへと連なる高碕達之助のアジア経済開発構想の軌跡を明らかにすることで、講和直後における日本の経済外交の特質を解明した。 また東洋食品工業短期大学において高碕達之助没後50年記念シンポジウムを開催するにあたってモデレータを努め、高碕研究の第一線の研究者によるパネルディスカッションを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高碕文書の整理については計画通りに進展し目録作成も順調である。さらにインドでの史料調査を実施したことで日印製鐵交渉の経緯を明らかにすることが可能となった。世界銀行アーカイブの史料調査については、日程の都合から第二年度は実施できなかったが第三年度での実施を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画として、1950年代後半の日本の経済外交、さらに関西外交の動向を明らかにするためには米国国立公文書館並びに世界銀行アーカイブにおける調査が不可欠である。米国での史料調査は、1950年代日本の経済外交の前提を分析するためには不可欠であり有用である。なお、北米での史料調査に際しては、米国外交史・日米関係史の専門家の助力を仰ぐ予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた米国での史料調査が日程変更のため実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
世界銀行アーカイブ並びに米国国立公文書館での史料調査を実施する。
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