2016 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の経済外交の再検討――高碕達之助文書を中心に
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25705004
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
井上 正也 成蹊大学, 法学部, 准教授 (70550945)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経済外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
第四年度としては、これまでの調査結果の中で見落としていた箇所を中心に追加調査を行なった。まず高碕の事業の起源にあたる東洋製罐の戦前事業に着目し、東洋食品研究所において戦前の台湾の鳳梨事業に関する史料収集を実施した。また戦後の日中民間貿易の理解を深めるべくLT貿易事務所関係者へのインタビューを実施した。またカーター大統領図書館でTrilatral Commissionファイルを調査し、高碕の米中仲介工作の背景であった民主党の対中外交に関する史料を調査した。その結果高碕の戦後アジア外交の展開の起源ともいえる戦前の缶詰事業から戦後の外交への連続性への手がかりを見出すことができた。 本年度は戦後を対象とした高碕達之助の人物評伝の執筆を進め、これまで収集した資料を基礎に戦後の電源開発総裁時代の借款問題について、国会図書館のデジタル雑誌記事及び電源開発(株)の社史を中心に執筆を行なった。またナセルとの交友に基づいたエジプトのアスワンダム開発計画についても調査を進めた。 研究成果としては、またLT貿易研究として富山県南砺市で「松村謙三と日中関係」と題する講演を行ない、松村と高碕の関係性について明らかにした。インドでの史料調査を基にした論文「高碕達之助と日印鉄鋼交渉」を執筆しており2017年度中に京都大学学術出版会から刊行される論文集に所収予定である。また東洋製罐の社史編纂プロジェクトとして戦前事業並びに戦後の人物小伝を執筆した。同社史も2017年内に刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高碕の戦後の事業については電発、日中民間貿易、日ソ漁業、日印製鉄など個別的研究を重ねた結果全体像が見えつつある。一方、高碕文書の整理については戦後部分については目録化が完成しているが、戦前部分については分量が膨大であるため未だ完了していない。そのため研究計画を一年延長している。高碕の戦前事業の全体像の解明にはさらに一年を要すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(延長年度)としては高碕の北洋漁業との関わりについての史料調査を進めると同時に、戦後の高碕の経済外交に関する姿勢を論文としてまとめる予定である。また兵庫県川西市の東洋食品研究所の戦前期高碕文書の整理を本年度中に完了させ、目録を完成させる予定である。
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Causes of Carryover |
2016年8月に体調を崩したため昨年後半は十分な研究時間を確保できなかった。そのため戦前期の高碕文書の史料調査が完了できなかった。また北洋漁業関係の調査が現時点で不十分であり十分な調査時間を確保できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
戦前期の高碕文書の整理作業を完成させる。同時に北洋漁業関係の史料調査ならびにこれまでの調査で未だに不十分であった箇所の調査を滞りなく進める。
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