2014 Fiscal Year Annual Research Report
1960年代中国の冷戦外交と日本―対日外交経験の積み上げと脱「革命外交」の研究
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25705006
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
大澤 武司 熊本学園大学, 外国語学部, 准教授 (70508978)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国外交 / 日中関係 / 文化大革命 / 対日外交経験 / 知日派 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の主たる研究活動は、中国外交部档案が再び公開された場合、これに対する継続的な調査・収集を行う予定であったが、日中関係は好転の兆しを見せてはいるものの、档案の再公開にまでは至らなかった。 そのため、平成26年度は年度当初に予定した通り、まず新たに刊行された中国側史料(張迪杰主編『毛沢東全集』香港:全52巻、潤東出版社、2013年12月、世界500部限定)を購入することで基礎資料の充実を図り、さらに文革期の中国内政に関する膨大な史料である『中共重要歴史文献史料匯編』(中文出版物服務中心、アメリカ・ロスアンゼルス)に対する体系的調査(日本では獨協大学が所蔵)を開始した。 また、具体的な作業としては、①1960年代前半期の中国の「対日政策機構」に照準を合わせて分析を進めること、②同時代の日中関係を研究する若手研究者との研究交流の場である「戦後日中関係研究会(仮)」の立ち上げと継続、③中国における外交関係者などに対するインタビュー活動などを計画し、これらをいずれも展開することができた。 ①~③の実績の詳細については「現在までの到達度」の部分で述べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究の到達度を、①1960年代前半期の中国の「対日政策機構」の分析、②「戦後日中関係研究会(仮)」の立ち上げと継続、③中国における外交関係者などに対するインタビュー活動に分けて述べると以下の通りである。 ①については、日本現代中国学会西日本部会研究集会(2014年6月14日・西南学院大学)において、「『以民促官』『半官半民』の舞台裏―建国初期中国の対日政策機構と廖承志」という報告を行うと同時に、これをまとめた同タイトルの論文を学会誌『現代中国』第88号(2014年9月)に発表した。 ②については、従来から継続している「廖承志研究会(戦後日中関係研究会に移行予定)」を複数回開催すると同時に、この研究会における研究・議論を土台にした学会分科会を開催した。これは、本研究計画のなかで第3年度(平成27年度)に予定していたワークショップを前倒しして開催したものであり、日本現代中国学会全国学術大会(2014年10月26日・神奈川大学)の分科会「日中関係Ⅱ」と題して行ったものである。また、2014年9月には1960年代に日中間で行われた半官半民の貿易である「LT貿易」の日本側代表者であった高碕達之助の没後50周年記念シンポジウム(東洋食品工業短期大学)でも報告を行い、中国外交部档案のなかに描かれる「高碕像」のありようを紹介した。 なお、③については、清華大学日本研究センターとの研究交流を中心に活動を展開し、特に2014年5月の交流では、研究報告を行うと同時に、同センターが内部刊行の形で出版した李廷江・劉建平主編『戦後中日関係口述史』(清華大学日本研究中心、2014年)を入手することができた。なお、本資料の分析の成果を口頭で発表したのが、②の学会分科会における報告である。 第2年度終了時点の現在においては、1960年代中国の対日政策機構研究について、特に前倒しで進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
日中関係の悪化に伴う研究活動上の制約は大きいが、2015年5月上旬、中国外交部を訪問し、現在および今後の外交部档案館の状況について確認したところ、現時点では2015年10月以降、再び開館を予定しており、档案の閲覧・調査も再開できるとの情報を得た。史料調査については、台湾や上海などの史料館での調査を引き続き行いながら、外交部档案館の動向を注視することでこれを展開する。 また、第3年度となる平成27年度は、いよいよ事例研究に着手する。特に1960年代半ばのLT貿易協定交渉やLT貿易協定実施の過程を事例として、中国の「対日外交経験」の蓄積過程を明らかにすることを目指す。また、並行して進めている1960年代の日中民間漁業協定交渉に関する研究についても、具体的な事例として中国の対日政策決定過程を明らかにするために利用することで、より立体的に1960年代中国の対日外交を再構成していく。
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Causes of Carryover |
結果的に少額の残余金(9,671円)となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
極めて少額の残余金であり、当初計画の範囲内であるといえる。
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