2015 Fiscal Year Annual Research Report
1960年代中国の冷戦外交と日本―対日外交経験の積み上げと脱「革命外交」の研究
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25705006
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
大澤 武司 熊本学園大学, 外国語学部, 准教授 (70508978)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国外交 / 日中関係 / 文化大革命 / 対日外交経験 / 知日派 / 戦後日中交流年誌 / 日中民間漁業協定 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の主たる研究計画は、中国の史料公開の状況をにらみつつ、1960年代の日中関係に関する史料調査・収集を行うと同時に、同時期の中国外交における「対日外交経験」の蓄積について分析を進めるというものであった。 ただ、残念ながら平成27年度も中国の史料の公開状況は好転せず、複数回、北京や上海などで現地調査をおこない、最新情報の収集や研究交流を展開したが、一次史料については、十分な調査・収集はかなわなかった。もっとも、本研究課題の一部でもある「中国の対日戦後処理」関連の一次史料については、2015年8月に撫順戦犯管理所(中国遼寧省)で調査を行った際、極めて重要な史料を複数獲得することができ、ひさしぶりに前向きな成果をえることができた。 他方、日本側の資料に関しては大きな研究成果を出すことができた。具体的には、1950年代ならびに1960年代の日中関係について、大型の資料集『戦後日中交流年誌』(ゆまに書房)の編集・解説執筆作業に取り組み、2015年11月には第1回配本分計9巻を刊行することができた。同資料集は、日本政府の内閣官房調査室から外部委託を受けた民間団体「民主主義研究会」が作成した膨大な資料集を復刻・刊行したものであり、第1回および第2回配本(2016年6月刊行予定)を合わせると全17巻となる大型の資料復刻プロジェクトとなっている。これは1960年代の日中関係史の実像解明を目指す本研究課題における基礎的研究、ならびに大きな研究成果となるものである。 なお、「対日外交経験」の蓄積については、1960年代半ばならびに1970年代初頭の日中民間漁業協定締結交渉を事例として、具体的な分析作業を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年は、①日中両国における史資料調査・収集ならびに、②1960年代中国外交における「対日外交経験」の蓄積に関する分析の深化を研究計画としていたが、①に関しては、撫順戦犯管理所における史料調査・収集を実現すると同時に、すでに紹介した『戦後日中交流年誌』の第1回配本(9巻)を実現することができた。 また、②については、日中民間漁業協定に関する先行研究の書評執筆や、これを事例として1960年代ならびに1970年代の中国の対日政策機構に関する分析を進めることができ、さらにその成果を①の作業とも関係する前掲『戦後日中交流年誌』の「解説」として原稿化することができた(2016年6月発表予定)。 また、これまでの研究蓄積を基礎として、現在、1950年代ならびに1960年代を対象とした「新書」原稿の執筆も進めており、平成28年度(最終年度)には、本研究の成果として出版することを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに本研究の成果として、①大澤武司解説『戦後日中交流年誌』(第1回配本、2015年11月、ゆまに書房、9巻)を刊行したが、今後については、その第2回配本(2016年6月、ゆまに書房、8巻)の復刻ならびにこれに付する専門的「解説」の修正・校正作業を進めていくことになる。これを通じて、計17巻の『戦後日中交流年誌』(1945年から1972年までを対象時期とする)を無事に刊行し、戦後日中関係史における最重要資料集として研究代表者の解説名義にて世に送り出すことで、本研究をさらに前進させるための基礎的研究がひと段落することになる。 また、本研究が対象とする1950年代ならびに1960年代の中国の対日外交について、現在、「新書」原稿の執筆を鋭意進めている。これは研究成果の社会的還元という面からも重要な意義を持つものであると考える。同書では、1960年代の文革期中国のみならず、1970年代後半から1980年代にかけての中国の対日外交についても、中国側の史資料に基づく幅広い実証的記述を行っており、これまで本研究課題において3年間にわたり進めてきた、中国の対日政策機構に関する研究や「対日外交経験」の蓄積に関する研究で得られた知見が数多く盛り込まれた成果になると考えている。 最終年度においては、上記2つの研究成果の確実な刊行を実現すると同時に、その成果を研究交流やワークショップなどにおける報告を通じて、積極的に発信していくことを計画している。
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Causes of Carryover |
計画が順調に進行していることもあり、ほぼ計画通りの支出(残余金は19,814円)であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
極めて少額の残余金であり、当初計画通りであるといえる。
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