2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25705010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
鷹岡 澄子 成蹊大学, 経済学部, 教授 (10361677)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 企業金融 / 法の経済分析 |
Research Abstract |
本研究の主な目的の一つは、銀行と企業と監査法人の関係が企業価値に与える影響をみることである。これによって、企業とステークホルダーとの関係の価値を計測することができる。企業と銀行の関係をあらわすために、具体的には、貸し出し関係や株の持ち株比率などの指標を用いる。監査法人と企業の関係では、監査法人の評判や質が企業の価値に与える影響を調べる。 平成25年度は、企業と銀行、企業と監査法人の関係を表す基礎となるデータベースを作成した。企業が融資を受けている銀行とその融資額や、メインバンクとの関係などを1992年度から2012年度まで時系列に渡ってデータベース化を行った。 また、研究を進めていくうちに、海外では企業と監査法人の関係が資金調達を担当する金融機関よりも影響があるという最新研究報告を学んだ。当初は、企業価値に与える企業と銀行の関係のみを計画していた。しかし、上場企業や上場していない企業でも株・社債など有価証券を発行する企業には監査が必要となる。粉飾決算や不正会計など、企業の決算報告書の信頼性を保証する監査法人の世界的な重要性の高まりから、本研究にも監査法人と企業との関係を組み込むこととし、データベースを当初の計画より拡充することにした。具体的には各企業について、時系列で監査法人、監査契約に基づく監査証明に係る報酬の金額、上記以外の報酬の金額、監査意見などの監査法人との関係を示すデータをデータベースに追加した。 企業価値のデータは、各企業の日々の株価や時価総額などのデータを時系列デイリーデータでデータベースを作成している。昨年度はこれらの異なる3つのデータベースを作成し、それらをどのように分析しやすいように統合することに取り組んだ。 同時に、関連する最新の研究を調べることによって、当初想定していたモデルを改善する着想を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、資本市場での資金調達が困難になった時に、企業にとって銀行との関係がどの程度重要なのか「企業と銀行の関係の価値」を計測することと、そのためのデータベース構築を計画していた。しかし、海外での最新の研究では、資本市場において企業が公表する情報を保証している監査法人の方が資金調達を担当している金融機関より影響力が大きいといった研究結果が報告された。そのため、企業と銀行のみならず、企業の価値を保証する役割を担っている監査法人もモデルに入れるべきだと判断した。よって、構築するデータベースを当初の計画を変更して、監査法人との関係も含めたデータベース構築を行ったため、当初の計画より分析に着手するのが遅れることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に取り組んだ、企業データ・銀行データ・監査法人データ・社債データ・株価データの構築を継続する。当初想定した企業と銀行の関係の価値を調べるモデルに、上場企業や社債発行企業に不可欠な監査法人と企業の関係もモデルに入れるため、新たなモデルを検証する。まず、監査法人に関しては、時系列のデータを検証するので監査法人市場について、監査法人の解散や合併などを調べる。その結果をもとに、企業が契約している監査法人と企業をマッチングさせて企業と監査法人の関係がどのくらいの継続性を持って成り立っているのかをみる。 監査法人の評判や、それが企業の資金調達に与える影響は最新の海外の研究で調べられており、先行研究としてベースとなるモデルに利用する予定である。海外での先行研究では、監査法人の評判が企業の社債発行に与える影響はアンダーライターである証券会社より大きいことが報告されている。ただ、海外と日本の金融市場ではメインバンクと呼ばれる銀行と企業の関係の強さが異なっていると考えられる。そのため、海外での先行研究をベースモデルとしつつも、日本の金融市場をうまくあらわすようなモデルを構築する予定である。 構築したモデルから得られた結果をまとめて、今年度中に国際学会や国際学術雑誌に投稿していく予定である。それによって得られたコメントを考慮して、モデルや推定方法を改善してい行く予定である。
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