2013 Fiscal Year Research-status Report
グローバルなビジネス・エコシステムにおけるプラットフォーム競争戦略の成功要因
Project/Area Number |
25705011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
立本 博文 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (80361674)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オープン標準 / プラットフォームビジネス / ビジネスエコシステム / 標準必須特許 / グローバリゼーション / オープンイノベーション / 車載エレクトロニクス / コンセンサス標準化 |
Research Abstract |
本研究の目的は「オープン標準を基盤としたグローバルなビジネス・エコシステムの形成方法」と「この形成過程で主導的役割を演ずるプラットフォーム企業の競争戦略」を明らかにすることである。本年度は理論的・実証的側面から研究を行った。理論的研究としては、オープン標準の形成過程で、必然的に発生する「標準必須特許(Standard Essential Patent:SEP)」の研究を行った。SEPは技術的優位を持つ企業が戦略的にコントロールできるものであり、ビジネスエコシステムを戦略的にマネジメントする強力なツールとなっている。これを背景に、近年頻繁に係争が発生している。2011年には北カリフォルニア地裁でアップルがサムスンを提訴し、互いに提訴しあう訴訟合戦となった。最終的に2013年のITCにおけるアップル製品の輸入差止命令に対して、オバマ大統領が拒否権を行使したことで、SEPの影響力の大きさが広く社会に知られるようになった。特許係争の問題は、経営学だけではなく、エンジニアリング的な研究開発マネジメントや、法学(知財法)や法律実務家(弁護士)も関連する学際的領域であり、従来、経営学的な研究が踏み込めない領域であった。このため、東京大学政策ビジョン研究センターや、経済産業省産業技術環境局認証課の主催する「SEP研究会」などを通じて研究をおこなった。成果として「知財管理」誌より学術論文を発行することができた。実証研究としては、日本企業発のプラットフォームの国際展開の事例研究として、2000年頃のiモードの海外展開の事例を調査した。また、最終年度に集中的に行う予定である車載エレクトロニクスのオープン標準化についても、2013年にも大きな変化があったため、調査をおこなった。車載エレクトロニクスのオープン標準化の調査は、国際ビジネス研究学会の2013年度発表大会(於近畿大学)で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オープン標準をつかったビジネスエコシステムのマネジメントの戦略的ツールとして、標準必須特許(オープン標準に含まれる特許)を対象にした。この分野はエンジニアリング、法学(知財法)、および実務家との連携した研究が不可欠であり、当初、困難が予想された。しかしながら、東京大学政策ビジョン研究センターや経産省主催の「SEP研究会」に参加することにより、どうにか成果を得ることができた。一方、当初、26年度に予定していた「日本企業発のグローバル標準」の事例研究のうち、工場内ネットワーク標準(cc-link)については、予備的調査より、より広い視点(例えば産業セクターレベル)で調査を行った方が良いかもしれない可能性が浮上してきた。この点については今後の検討課題である。また、現在予定しているのは事例研究のみであるが、オープン標準が産業に与える影響の大きさを把握するため、より定量的な研究を視野に入れることを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度以降の研究方針については、おおむね研究計画書に記したとおりになると思われるが、2点の拡張ポイントがある。1つめは特許についてである。25年度の調査で標準必須特許の重要性が明らかになったので、この方向での拡張の可能性を探りたい。もう一点は、26年度に予定している日本企業発のオープン標準の事例研究のうち、「工場内ネットワーク標準(cc-link)」については、半導体製造装置産業のグローバル標準としてとらえ直す方向を検討している。その際に、より定量的なアプローチがとれないかを検討していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していたよりも海外渡航にともなう旅費の執行が過小になったため、予算額と執行額の間に差が生じた。これは海外調査を予定していたが、国内調査で代替できたためである。 26年度として海外渡航費と国内移動費、および定量分析の環境整備(計算機やデータベース)を主として、使用する予定である。また、データ整理のためのアルバイト費などにも利用する予定である。
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