2014 Fiscal Year Research-status Report
グローバルなビジネス・エコシステムにおけるプラットフォーム競争戦略の成功要因
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25705011
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
立本 博文 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (80361674)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オープン標準 / プラットフォームビジネス / ビジネスエコシステム / 標準必須特許 / グローバリゼーション / オープンイノベーション / コンセンサス標準化 / 国際競争力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、オープン標準を活用しながらグローバルなビジネスエコシステムを形成するメカニズムの研究と、そのビジネスエコシステムでの競争戦略の研究という2つの側面をもつ。昨年度はオープン標準で必然的に発生する標準必須特許の戦略的活用を研究した。今年度はこれを推し進め、移動体通信産業における標準必須特許の実証研究をおこなった。2008年以降の第4世代移動体通信(LTE)の標準必須特許宣言戦略を研究した。 この研究過程で対象とする特許データが膨大(数万件-十数万件)であり、通常のデータ解析手法では処理が困難である事が明らかになったため、新たなデータ処理・統計手法を導入した。この手法が有効であることがわかったため、追加的研究として特許情報を用いて製薬産業における共同研究の成果研究を行った。 さらに今年度はビジネスエコシステムと競争戦略についてより理論的・実証的に研究を行った。理論面では、昨年の研究成果を生かして、オープン標準を活用した競争戦略を書籍の1章として研究成果をまとめた。既存研究では、数理的説明は経済学、実証的説明は事例分析を中心に経営学というように別々の分野で議論されてきたが、これらの研究成果を統合的に利用し、オープン・クローズ戦略やプラットフォーム戦略の理論展開を行った。また理論を深めるため発展的なビジネスエコシステムの事例として、燃料電池車と水素インフラについて事例研究をおこなった。燃料電池車のエコシステムは新しい動力システムとして注目されている。 実証面では、半導体製造装置分野での実証研究をおこなった。当初は事例研究を中心にすることを計画していたが、より実証的な統計データが準備できたため、定量的研究を行った。検証結果では、2003年以降、急速に半導体製造装置分野でプラットフォーム化の現象が起きており、これがオープン標準の普及と深く関係していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、ビジネスエコシステムのマネジメントやその中での競争戦略を明らかにする上で、通信産業の事例と、工場内ネットワークの事例の事例を念頭に研究計画を立案した。いずれも事例研究を中心に置いていた。 通信産業の事例は昨年度、iモードの事例研究を行い、今年度は定量的研究として標準必須特許宣言における戦略的行動を研究した。この過程で、研究手法上の発展があった。特許データが膨大であるため、より高度なデータ処理手法・定量手法を導入した。 一方、工場内ネットワークの事例は、当初の計画ではcc-linkの事例研究を行う予定であった。しかし、予備的研究の中で同じテーマでより定量的な分析が可能である半導体製造装置分野に対象を広げて、実証分析を行った。競争戦略研究で定量的研究は、海外学会では多いものの、国内学会では希少であるため、重要な進展である。これは、前述の特許データ処理のデータ処理・定量手法を活用したものである。 また、ビジネスエコシステムのマネジメントの理論構築を助成するために、燃料自動車と水素インフラの事例の研究を行った。この事例研究は研究計画当初は立案されていなかったが、既存研究が欧米事例が主であり、日本事例を観察することが不可欠と判断して、事例研究を行った。研究成果は、国際的な自動車産業の研究コロキアムであるGERPISAにて発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、定量研究としては、移動体通信産業における標準必須特許宣言についての研究と半導体製造装置産業の競争戦略について研究を行った。今後の研究方策として、これらの研究成果をまとめる。また、この研究成果をつかって、より詳細に入り込んだ研究を発展的に行う予定である。 一方、この研究過程で、理論的・手法的な発展があった。ビジネスエコシステムのマネジメント研究では、競争戦略研究がある一方、イノベーション研究も盛んに行われている。ビジネスエコシステムでは共同研究が多く行われており、これはオープンイノベーション研究の中心的テーマである。今回の研究の過程で特許データベースをもちいた大規模データの定量的研究を行ったので、この手法を用いて共同研究行為の効果の研究を検討する。今年度は特許で研究開発の成果がはかりやすいと思われる製薬産業の対象に定量研究を行う。
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