2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25705022
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
甲斐田 幸佐 独立行政法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 主任研究員 (80586264)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 睡眠 / 記憶 / 感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
感情記憶は、ヒトの気分状態や気質形成に大きく影響する。そのため、感情記憶の研究は、心理学、精神医学領域における重要テーマである。本研究では、レム断眠(レム睡眠だけを選択的に抑制すること)が感情記憶および連合記憶の記銘に及ぼす影響を調べた。また、記憶課題を行った直後から8日後までの記憶の定着と忘却の過程を追跡した。本研究で検討した仮説は下記2点であった。(1)レム断眠の直後には、通常睡眠の場合と比べて、中性記憶は阻害されるが、不快記憶は影響を受けない。しかし、レム断眠の8日後には、不快記憶の忘却が生じる。(2)レム断眠により、連合記憶は影響を受けない(レム睡眠と連合記憶は関係していない)。平成26年度は、平成25年度に検討した実験手法を使って実験を行った。データを詳細に解析した結果、レム断眠は、記憶の記銘に影響を及ぼさないことが分かった。また、レム断眠は、連合記憶の記銘にも影響しないことがわかった。一方で、全断眠(38時間の連続覚醒)をすると、翌日の記憶の記銘は記憶の種類に関わらず阻害されることがわかった。これらの結果は、記憶の記銘に重要な睡眠は、レム睡眠ではなくノンレム睡眠であることを示唆している。一方で、レム断眠後には影響を受けなかった不快記憶は、8日目には忘却が進んでいた。この結果は、上記仮説(1)を支持するものであり、レム睡眠は不快記憶の長期的な保持に影響することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験を遂行し、データの取得と解析まで到達した。しかし、学会発表による議論と更なるデータ解析はまだ行っておらず、来年度以降の課題として残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに取得したデータを順次解析し、学会発表および国際学術論文として公表する。また、本研究の結果を含め、研究領域の知見をまとめた総説を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
データ取得時期の都合で、データ解析および学会発表の計画が遅れたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ解析補助のための人件費、学会発表旅費等に使用する
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