2014 Fiscal Year Annual Research Report
単分子磁石精密複合化による分子スピンバルブ素子創生
Project/Area Number |
25706005
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 大輔 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60589399)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 錯体化学 / ナノ材料化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、研究代表者らが開発したポルフィリン単分子磁石を集積化し、巨大磁気抵抗効果を単分子スケールで発現させることを目指している。特に平成26年度は以下を目的に研究を展開した。1.各種炭素材料との新規複合化方法開発、2.プローブ顕微鏡を用いた単分子磁石のスイッチング、3.外場応答性分子の開発、4.金電極との連結による電気伝導度の評価。以下に得られた結果をまとめる。 1の各種炭素材料との複合化においては、新たにアルキル長鎖を有する鋳型分子を用いて、オクタエチルポルフィリン単分子磁石の配列方法を制御することを試みた。走査トンネル顕微鏡を用いることで、HOPG上に単分子膜を形成することを明らかにしている。特に、分子の濃度を変化させることで分子密度を自在に制御可能である可能性を示すことができている。また、ポルフィリンを基本骨格とした長鎖含有分子がHOPG上に整列する様子を走査トンネル顕微鏡で観測しており、今後は単分子磁石化を検討していく予定である。2のプローブ顕微鏡を用いた単分子磁石のスイッチングについては、トンネル電流の磁性スイッチングを試みた。プロトンの脱離を確認することに成功しており、磁性の単分子レベルでの制御が可能であると期待される。また、印加電圧を変化させることで、誘起される現象に差異が観測されており、今後詳細な評価を行っていく予定である。3の外場応答性分子の開発に関しては、アントラキノンとポルフィリンを鈴木カップリングにより共有結合的に連結する反応の最適化を行っている。4の電気伝導度の評価に関しては、STM-BJ法により、単分子での電気伝導度を評価することに成功している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は単分子磁石の配列と単分子物性の評価を目指した研究を行った。分子の配列とSTM-BJ法による単分子特性の評価および新規分子の合成はおおむね順調に進行した。さらに、STMを用いだ単分子レベルでの磁性のスイッチングにも成功しており、これは当初の予想を上回る大きな成果であると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、研究は順調に進展していると言える。特にSTMによる磁性スイッチングは当初の予想を上回る興味深い結果である。今後は、従来の研究を引き続き推進することに加えて、磁性スイッチングの技術を利用した新しい分子設計の指針を検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度の使用額が生じた理由としては、人件費が発生すると考えていた業務に関して、人件費が発生しなかったためと、成果発表に関して予想より出費を抑えることができたためである。また、物品費に関しても予想より消耗品の購入を抑えて実験を行うことができた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入に使用予定である。特に、所属機関が兵士27年度より変更になったため、実験を行うための必要な物品の購入に充てる予定である。
|