2015 Fiscal Year Annual Research Report
単分子磁石精密複合化による分子スピンバルブ素子創生
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25706005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 大輔 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (60589399)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 錯体化学 / ナノ材料科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、研究代表者らが開発した分子磁性材料を集積化し、巨大磁気抵抗効果を単分子スケールで発現させることを目指している。当年度の研究成果は大きく分けて以下の2点である。 1.テンプレート分子を利用した分子磁性体と炭素材料の複合化 本研究では、自己組織化によりHOPG上にネットワーク構造を形成する分子を利用して、分子磁性材料を精密に配列することを目指した。特に、ヘキサゴナルポーラス構造を形成する含アルキル長鎖π共役系分子を利用することで、ポルフィリン単分子磁石の配列密度制御に成功している。配列構造は、走査トンネル顕微鏡により評価した。これらの成果を利用することで、グラフェンデバイス上に単分子磁石を精密に配列することが可能となると期待している。一方で、当年度に用いたテンプレート分子は、ポルフィリン単分子磁石を強く吸着するのに適した構造ではなく、ポーラス構造の最適化が更なる課題として存在している。そこで、新規含長鎖π共役系分子の開発を行い、テンプレート分子としての応用を検討した。特に当年度は分子合成に注力し、アルキル長鎖を系統的に変化させた共役分子の合成に成功している。 2.走査トンネル顕微鏡による分子磁性材料のスイッチング特性評価 本研究では、走査トンネル顕微鏡を利用して分子磁性材料の磁気特性評価を行っている。特に、これまでにポルフィリン単分子磁石はパルス電流により電子状態が変換されることを見出している。これを利用することで、単分子スケールでの分子磁性材料のパターニングが可能になることが期待される。当年度はこれまでに得られている結果について、電子状態の変換が起きる際に観測されるSTM像の変化に関して解釈を行い、従来の実験結果のさらなる理解を目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、目的とする分子磁性材料の精密配列と単分子分解能での観測および評価を実現している。分子磁性材料を利用した単分子デバイス実現のための基礎的知見を順調に蓄積することに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、研究は順調に進行していると考えている。特に、テンプレートを用いた磁性材料の精密配列に関しては、今後の重要な戦略と位置付け、研究を進展させていく。
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Causes of Carryover |
少額の基金が次年度繰越となった。当初の予定よりも学会発表等が少なくなった一方で、消耗品費が多額になったことで出てきた差額に由来する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の消耗品費として合成実験のために使用する予定である。
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