2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25706012
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
早水 裕平 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (80443216)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ペプチド / ナノシート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体ナノシート上に特異的なナノ構造を自己成長するペプチドを用いて、バイオ材料とナノ材料の界面の電子状態を制御し、新規バイオナノ・ハイブリッドシステムを探索します。 昨年度に引き続き、ペプチドの自己組織化とナノシートの化学ポテンシャルの相関の調査を行いました。本年度は、新たに電荷を有するアミノ酸を工学的に設計したペプチドを用意し、それらがグラファイト基板の電気化学的ポテンシャルに対してどのように応答し、その自己組織化構造を形成するかを調査しました。その結果、アミノ酸の電荷の正負によって、著しく電気化学ポテンシャルに対する応答が変化することがわかりました。 続いて、単層二硫化モリブデンに吸着するペプチドによって、二硫化モリブデンからの発光スペクトルがどのように変調を受けるのかを検証しました。異なる電荷を有するアミノ酸を有する2種類のペプチドを用意し、それらの吸着によって、発光スペクトルの変調の様子が異なることを発見しました。詳細には、二硫化モリブデン中に光励起によって生成される自由励起子と荷電励起子の割合が、吸着するペプチドの種類によって異なり、また荷電励起子はペプチドの吸着によって空間的に束縛されていることが示唆される実験結果が得られました。トランジスタ構造をもつ二硫化モリブデンで同様の実験を行い、電気伝導特性と発光特性の両面からペプチドによる二硫化モリブデンの電子状態の変調について調査を行ったところ、ペプチドによって二硫化モリブデンに誘起する電子濃度の量に差異があることがわかりました。またその傾向は、上記の荷電励起子の発光スペクトルから得られる発光エネルギーと相関を持っていることがわかりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の「ペプチドの自己組織化とナノシートの化学ポテンシャルの相関の調査」については、ほぼ理解が進んだと考えます。自己組織化ペプチドの基板表面における様態が基板に与えられた電気化学ポテンシャルにより劇的に変化し、その変化は、ペプチドのアミノ酸配列中にある電荷をもったアミノ酸の種類によってある程度予測することが可能となりました。 「空間的な電子状態の分布の計測」については、空間分解能は落ちるものの、自己組織化ペプチド構造や表面における被覆率の差によって、二硫化モリブデンからの発光特性が変化していることを観測しました。ただ、より高い空間分解で微視的な効果を測定する必要があり、今後も引き続き研究を進める必要があります。 「波長可変光源を用いたエネルギー移動機構の探索」については、波長可変光源を使用するのではなく、まずは単色光源を用いてエネルギー移動について検証を行うための実験系の構築を行いました。来年度は当初の計画の通り、それを用いて、実験結果を収集する予定です。
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Strategy for Future Research Activity |
吸着した自己組織化ペプチドが半導体ナノシートの電子状態を空間的にどのように変調するのかは、引き続き検証が必要です。高分解の空間分解能を得るために油浸光学レンズを用いた液中での蛍光イメージング測定を行います。併せて、ペプチド自己組織化構造の違いによるナノシートの伝導特性や光学特性の違いをより明確な形で実証するような実験を設計します。また、より高分解能を有する原子間力顕微鏡を用いて、液中でのペプチド自己組織化構造の調査を行います。 「ペプチド‐基板間のエネルギー移動機構の探索」については、来年度は蛍光分子だけではなく、酸化還元機能を有するタンパク質酵素を用いてより、バイオデバイスに近い形での実験を行う予定です。これにより、本研究で得られた知見がいかにバイオ分子をエレクトロニクスと融合することに有益であるかを検証することができます。
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