2014 Fiscal Year Annual Research Report
磁性ヘテロ接合の巨大なスピン軌道相互作用現象の解明と革新的な磁化制御技術の確立
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25706017
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
林 将光 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (70517854)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は薄膜へテロ構造における電流誘起有効磁場の温度依存性と積層構造依存性から、スピンホールトルクの定量評価を行った。薄膜へテロ構造にはTa/CoFeB/MgOとTaN/CoFeB/MgOを用いた。ホール電圧の基本波と第2高調波の印加磁場依存性から電流誘起有効磁場の温度依存性を測定した結果、縦有効磁場(Slonczewskiトルク)と横有効磁場(Field-likeトルク)の温度変化が異なることがわかった。測定温度をあげると、縦有効磁場が減少するのに対し、横磁場はexponential的に増加した。理論モデルとの比較から、これらの結果はTaやTaNからCoFeB層に進入するスピンの透過率の温度依存性に起因していることを見出した。 また、薄膜へテロ構造において、積層構造の組み合わせによって、界面で発現するジャロシンスキー守谷相互作用を制御できることがわかった。強磁性体にCoFeBを用い、その下地層に重遷移金属であるHf、Ta、TaN、Wを用いると、ジャロシンスキー守谷相互作用の大きさと符合が変化した。特にW/CoFeBでは大きなジャロシンスキー守谷相互作用が誘起され、CoFeB内に旋回性の統一された磁区構造が発現することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薄膜へテロ構造におけるスピンホールトルクの定量評価や、ジャロシンスキー守谷相互作用の積層構造依存性などを明らかにしているため、おおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は従来の遷移金属以外の物質も取り込んだ様々な薄膜へテロ構造に関する評価も行っていく。構造反転対称性が破れた多層構造や導電性酸化物などを含む積層構造を中心にスピンホールトルクの定量評価やラシュバ効果の有無などを調べる。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた消耗品(ターゲット、基板など)が当初予定より長い期間維持できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に予定していた消耗品(ターゲット、基板など)の購入。
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