Outline of Annual Research Achievements |
三年計画の二年目にあたる今年度は, 前年度までに明らかにした, グラフェンナノリボン(GNR)合成におけるプラズマ効果に関する研究をさらに発展させ以下の成果を得た.
(1) 前年度までの結果は, プラズマCVDによりNi中に炭素が固溶し, GNR合成に必要不可欠な触媒である“Niナノバー”の高温安定性が改善される可能性を示唆していた. 一方で, Ni中炭素濃度に関する直接的な測定, 及び架橋GNRの析出機構等に関してはまだ不明な点が多く残されていた. そこで, X線光電子分光測定により, Ni中における炭素濃度の深さ分布を測定したところ, 熱CVDではNi表面にわずかに炭素が吸着している程度であるのに対し, プラズマCVDの場合, 表面から深い位置においても10%以上の炭素が存在することが判明した. このことは, 前年度予測したプラズマによる高効率炭素供給の正当性を実証するものである. また, NiーC系の相図を用いて, GNR合成に関する統一的モデルの構築を試みた. 相図を用いることにより, Ni中の炭素濃度上昇に伴い, 固ー液相の相転移温度閾値が上昇することが判明した. これは, プラズマにより高効率で炭素供給が行われたNiがより高い温度耐性を持つ実験結果と一致している. また, 冷却過程においてGNRが析出する場合, グラフェン形成に伴いNi中の炭素濃度が著しく減少することが考えられる. 前述の通り, 低炭素濃度のNiは高温耐性が劣化するため, 不安定な液相に相転移し, 結果としてGNR下部から消失し架橋GNR構造が形成されると説明できる. このように, プラズマCVD中の架橋GNR合成モデルを提唱することに成功した. (2)上記合成モデルをもとに合成条件を最適化した結果, GNRの合成効率を90%以上に高効率化することに成功し, さらに約400本のGNRを高密度で配列合成したGNRアレーの形成に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の予定では, グラフェンナノリボン集積化に向けたドーピング制御等を実施する予定であった. 一方で, 研究を進めていくにつれ, これらの高集積デバイス実現には多数のグラフェンナノリボンを高効率で基板上に合成する技術が必要不可欠であるという課題を認識するに至った. そこで, 今年度は, ドーピング技術の確立の前段階として, 集積化において必須の合成効率向上という課題に対する実験を行った. 合成モデルの構築, 及びそれに基づく条件最適化の結果, 約400本のグラフェンナノリボンを90%以上の効率で合成することに成功した. この成果は, 今後の集積化デバイス実現に向け非常に大きな成果と言えるため, "おおむね順調に進展している"と判断した次第である.
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