Outline of Annual Research Achievements |
非線形分散型方程式の重要なクラスのひとつである, 一般化KdV方程式の解の長時間挙動について, 特に, 解の挙動を分類するという観点から研究を行った。この問題は, ``任意の解はいくつかのソリトンの重ね合わせと散乱波に分解する''というソリトン分解予想とも関わっている。一般化KdV方程式は冪乗型相互作用を持ち, 方程式から決まるスケールにより, 非線形項の冪が5未満の場合は質量劣臨界, 5の場合は質量臨界, 5より大きい場合は質量優臨界とよばれ, ソリトンの安定性, 不安定性など, 非線形項の冪が5を境に解の挙動が大きく変わる。 質量臨界という特殊な場合はソリトンが不安定であることが知られており, その性質が解をお互いに反発させる効果をもたらす。そのため, 解の挙動は質量劣臨界の場合に比べ扱いやすく, 研究は非常に進んでいる。一方で, 質量劣臨界の場合は, ソリトンが安定となるため上で述べたような性質は期待できず, 解の挙動の分類はあまり進んでいない。本研究においては主に, ソリトン解が安定になる質量劣臨界の場合に一般化KdV方程式の解の挙動を, 分散型方程式の時空評価に基づく凝集コンパクト性の議論を用いて解析した。 力学系的な観点から述べると, 方程式の解は状態空間内の曲線とみなせるが, 現在は, 零解や(多重)ソリトン解など特徴的な解の近くから出発すればこの解にやがて近づく(真の解とこれら特徴的な解との差が適当な意味で小さくなる)ことが知られている。今年度はこれらの特徴的な挙動に近づく解がなす集合と近づかない解のなす集合の境目に目を向け, 零解に近づく(散乱する)解がなす集合と近づかない(散乱しない)解のなす集合の境目にあたる元の存在を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形分散型方程式の重要なクラスのひとつである, 一般化KdV方程式の解の長時間挙動について, 本年度は零解に近づく(散乱する)解がなす集合と近づかない(散乱しない)解のなす集合の境目にあたる元の存在を示した。これは一般化KdV方程式の解の長時間挙動を調べるにあたり重要なステップであり, 今後のさらなる解析の足掛かりとなることが期待される。
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