2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25707009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒向 重行 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90533563)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 系外惑星 / 赤外線 / ダスト / 巨大衝突 / 観測装置 |
Research Abstract |
地球型惑星は複数回の巨大衝突(ジャイアントインパクト)により質量を獲得すると考えられている。本研究では、これまで理論研究が中心だった巨大衝突の議論に対し、直接的な観測により新たな知見と制限を与えることを目的とする。高温高圧下でのみ生成されるシリカ(SiO2)を巨大衝突のトレーサと考え、若い系外惑星系から放射されるシリカフィーチャ(波長10μm)の形状と時間変化を観測することで巨大衝突の姿を探る。観測には我々が開発中の中間赤外線装置MIMIZUKUを用いる。MIMIZUKUは視野合成機能により、これまでの地上装置を圧倒する高い精度で10μm帯スペクトルを観測することができる。本研究は中間赤外線装置MIMIZUKUの開発と、それをすばる望遠鏡に取り付けて実施するシリカフィーチャの分光監視観測による観測的研究から構成される。研究の初年度である平成25年度には、MIMIZUKUの検出器読み出しシステムを3種類の検出器(近赤外線検出器、短波長中間赤外線検出器、長波長中間赤外線検出器)を駆動できるように機能拡張する開発を実施した。また、製作した冷却光学系駆動ユニットの動作試験と調整を実施した。これらの各ユニットを遠隔で操作するためのソフトウエアの開発も行った。MIMIZUKUを用いて実施する地球型惑星の巨大衝突の観測計画についてドイツで開かれた国際研究会(PPIV)にて発表した。研究2年目となるH26年度には検出器読み出しシステム、冷却光学系駆動ユニットを含むすべてのユニットをMIMIZUKUに搭載した後、国立天文台ハワイ観測所へ輸送する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請に記述した「MIMIZUKUの検出器関係のエレクトロニクスの開発」および「MIMIZUKUの駆動系ユニットの開発」については計画通りに進めることができた。これらのユニットをMIMIZUKUの真空冷却デュアに搭載して行う駆動試験については、デュアに見つかった不具合の改修のために、今年度内に実施することができなかった。未完の試験は次年度の前半にデュアの改修が完了し次第、実施する予定である。東京大学アタカマ天文台(チリ)における地球大気放射の影響の除去方法の開発は過去に取得したデータを用いて検討を行った。交付申請に記述したとおり、MIMIZUKUの成果と観測計画についてを7月にドイツで行われた国際研究会にて発表した。デュア搭載試験以外の開発が当初計画よりも進展があったため、次年度に予定していた「観測装置を望遠鏡に搭載して実施するためのインターフェースの開発」を前倒しして実施した。年度末に検出器読み出しシステムの一部の性能が仕様を満たさないことが判明した。この点に関しては次年度に改修を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はMIMIZUKUの真空冷却デュアに各ユニットを搭載して駆動試験を実施する。これに先立ち、平成25年度の年度末に明らかとなった検出器読み出しシステムの不具合の修正を実施する。その後、各ユニットの制御ソフトウエア、観測用インターフェースソフトの機能強化を実施する。MIMIZUKUが生成する膨大な動画データを効率的に処理するパイプラインソフトウエアの開発も行う。その後、MIMIZUKUを国立天文台ハワイ観測所に輸送し、ハワイ観測所にて観測に向けた最終調整を行う。以上のハードウェアの開発と並行してMIMIZUKUを用いた科学観測の計画を具体化する。平成26年6月にはカナダで開催される国際研究会(SPIE)にてMIMIZUKUの開発状況を発表する予定である。平成27年度は、MIMIZUKUをすばる望遠鏡に搭載してYSOやデブリ円盤からのダストフィーチャの分光観測や測光観測を実施する。年間数回の高精度監視観測を実施することで、ダストフィーチャの時間変動の検出をめざす。平成28年度は、引き続きYSOやデブリ円盤のダストフィーチャの監視観測を実施する。得られた観測データを随時解析し、フィーチャの時間変動を生むプロセスを解明し論文にまとめて発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
観測装置の開発が当初の計画よりも進展があったため、次年度に実施を予定していた「観測装置を望遠鏡に取り付けて観測を実行するのに必要なインターフェースの開発」のために180万円の前倒し支払請求を行った。このうちの大部分は計画どおりに使用されたが、MIMIZUKUの真空冷却デュアの不具合のためにデュアが改修状態になってしまったため、一部のインターフェースユニットの開発に着手できず、助成金の一部を次年度に繰り越すこととなった。 平成26年度に繰り越した助成金は、上記の理由で平成25年度に未完となったインターフェースユニットの開発にて使用する予定である。
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Research Products
(3 results)