2015 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホールへのガス降着現象の詳細観測のための近赤外線モニター観測体制の構築
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25707012
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
西山 正吾 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (20377948)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 赤外線天文学 / ブラックホール / 銀河系 / 銀河中心核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ガスの塊とみられる天体G2の、ブラックホールへの接近に伴う突発現象の発見である。G2が銀河系の中心にある超巨大ブラックホールSgr A*の近傍を通過すると予想された平成25年より、突発現象の早期検出のためのモニター観測と、その後のフォローアップ観測の体制を整えてきた。 本研究では平成25年より、南アフリカ天文台にある赤外線望遠鏡IRSFと近赤外線カメラSIRIUSを用いて、Sgr A*の近赤外線モニター観測を続けている。平成27年度も、これまでと同様3日に1回のペースで観測を行った。4月には現地に観測に行き、集中的な観測を実行した。またこれまでの観測データに対して解析を行い、平成27年度初頭までの段階では、大きなフレアが起きていないことを確認した。その後も、Sgr A*に関連する大きなフレアの報告はない。これらの研究結果は、平成27年8月と平成28年1月の「ブラックホール地平面勉強会」において報告した。またその他に、同じ領域のデータを用いた結果を、平成28年9月の日本天文学会秋季年会で発表している。 また本研究と関連して、ブラックホールが周囲の星の形成に与える影響に関する研究を行った。ブラックホールの強い潮汐力により星の形成が困難な領域から少し離れたところには、年齢が1億年から10億年程度の星が点在していることが分かった。その結果をAstronomy & Astrophysics誌に発表した("Spectroscopically identified intermediate age stars at 0.5-3 pc distance from Sagittarius A*", S. Nishiyama, et al. 2016, 588, id. 49)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年より継続している超大質量ブラックホールSgr A*の近赤外線モニター観測を、平成28年度も継続しておこなった。平成27年4月には現地へおもむき、1週間滞在して観測を行った。その後は、観測所に滞在する観測者に依頼し、モニターを継続した。その結果、27年度は合計73日間のデータを取得することができた。これは、Sgr A*が観測できない1-2月、11-12月を除くと、ほぼ3日に1回の頻度である。 また平成27年度初頭までのデータについて、詳しい解析を行った。観測データは1次処理後、天体の位置合と画像のひろがりを合わせて、参照データを差し引く。これはマイクロレンズ現象を探す時に使われている手法であり、Sgr A*の位置におけるわずかな明るさの変化も検出できるはずである。 上記の手法を用い、平成27年5月まで、1000回以上におよぶ観測データを解析したが、その中で大きな増光現象を見つけることはできなかった。1.6ミクロン帯(Hバンド)、2.2ミクロン帯(Ksバンド)どちらでも同じような結果であったので、少なくとも上記の観測期間中には、大きな増光現象は起きなかったと結論できる。 このように、観測とデータ解析は順調に進んでいる。残念ながら増光現象は検出できていないが、平成28年度もモニター観測を継続する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も引き続き、Sgr A*のモニター観測を行う。ガス雲G2がブラックホールの最近点を通過して約2年が経過している。ガスが自由落下的にブラックホールへ落ち込む、という説はほぼ否定されたものの、ブラックホールを周回しながら、数年の時間をかけて落ち込んで行く、という説もある。また、X線の観測では、G2が通過する前後で、フレアの頻度や大きさが変化しているという報告がなされた(Ponti, G., et al. 2015, MNRAS, 454, 1525)。まだSgr A*のフレア現象に変化が生じる可能性は残されているので、平成28年度も引き続き観測を行う。 データ解析方法の検討も引き続き行う。現在の段階で、Sgr A*の明るさが数10倍になるような、大きなフレアの存在の可能性は小さくなった。ただし、より小さなフレアが起こった可能性はある。これまでのデータ解析で、ブラックホールの検出器ピクセル上の位置の変動が、小さな光度変化検出の障害になることが分かってきた。今年度はこの問題に取り組み、より小さなフレアの検出を目指す。 また、観測データには、数1000個の星がうつっている。これは、数1000個の星の明るさを数年にわたってモニターしたデータがあることを意味する。これらの星の解析も始めており、すでに100個以上の変光星の存在を確認している。今年度はこれらの星の変光曲線を詳細に解析し、新たな変光星の有無を確認する。
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[Journal Article] Number density distribution of near-infrared sources on a sub-degree scale in the Galactic center: Comparison with the Fe XXV Kα line at 6.7 keV2015
Author(s)
K. Yasui, S. Nishiyama, T. Yoshikawa, S. Nagatomo, H. Uchiyama, T. G. Tsuru, K. Koyama, M. Tamura, J. Kwon, K. Sugitani, R. Schoedel, T. Nagata
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 67
Pages: id. 1237
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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