2013 Fiscal Year Annual Research Report
加速器によるタウニュートリノ出現モードを用いたνμ→ντニュートリノ振動解析
Project/Area Number |
25707019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
福田 努 東邦大学, 理学部, 博士研究員 (10444390)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニュートリノ振動 / タウニュートリノ / Appearance / 原子核乾板 / OPERA実験 |
Research Abstract |
ミューニュートリノ(νμ)からタウニュートリノ(ντ)への振動をντ出現で検証する長基線加速器ニュートリノ振動実験OPERAの解析を推進した。OPERA実験で使用する原子核乾板検出器ECCはντ反応を直接観測した実績を持つ唯一の検出器で、この研究課題に最終決着を付けることができる。 2013年度の解析で第4例目のντ出現事象の検出に成功した。これまでに詳細解析を行った約6000事象のニュートリノ反応のうち、計4例のντ反応候補検出により、νμからのντ出現を背景事象から4.24σ(99.999%)の信頼度で観測し、世界最高感度を達成した。この成果に繋がった本研究課題代表者の解析技術開発に対して、平成26年度 日本写真学会 進歩賞「原子核写真乾板における自動飛跡認識技術の高度化研究」が授与された。 引き続き、ニュートリノ反応解析を進めてντ出現事象の統計を増やし、確度向上を図る。また、解析技術の改良によるντ反応の検出効率向上、補完実験によるバックグラウンド(BG)推定の精緻化を進めてゆき、ντ出現モードを用いたνμ→ντニュートリノ振動解析へ繋げる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
早い段階で4例目のντ出現事象が見つかったことが大きい。現在検出したντ反応候補事象は、3例がτからハドロンへの崩壊事象、1例がτからμへの崩壊事象である。 バックグラウンド推定は検出数の多いτ→ハドロン崩壊に着目し、その主要なBGであるハドロンの2次衝突反応についての精緻化研究を目的とした新たな実験をCERNで遂行した。現在、自動飛跡読取り装置での原子核乾板の飛跡データ取得は全て終了し、解析が進行中である。 2013年度は国際会議PASCOS2013での成果発表「Evidence of Tau Neutrino Appearance in a Muon Neutrino Beam with the OPERA Experiment」(by Tsutomu Fukuda)を始め、12件の本研究課題に関連した国際会議(5件)、国内学会・研究会(7件)の発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 現在までにOPERAで未検出なτ粒子の崩壊モードは、τから電子への崩壊モードである。ντ反応の検出効率向上にはこのモードに対する検出効率の改善が欠かせない。そこでECC中での系統的な電子検出技術の開発及びエネルギー測定技術の開発を進める。 (2) 同じくντ反応検出効率向上のために、短寿命で崩壊するτ粒子の探索を強化する。現在までに検出しているντ反応は全てτ粒子の飛跡が原子核乾板に記録されているもので、原子核乾板に到達する前の標的鉛板中で崩壊する事象が相当数あるはずである。 (3) バックグラウンド推定精緻化研究のための新たな補完実験では、ECCに2,3,4,5,6GeV/cのπ粒子を照射している。既にECC中での系統的なハドロン反応解析手法は確立しているので、この解析を着実に進める。 (4) 上記(1)-(3)で開発する技術や得られる知見はOPERA実験だけでなく、原子核乾板を用いた将来のニュートリノ実験・宇宙線実験等にも活用できる可能性がある。そこで学会・研究会等で多様な情報を収集し、より広い観点から原子核乾板の発展性や新しい実験について検討する。
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