2015 Fiscal Year Annual Research Report
加速器によるタウニュートリノ出現モードを用いたνμ→ντニュートリノ振動解析
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25707019
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
福田 努 東邦大学, 理学部, 博士研究員 (10444390)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニュートリノ振動 / タウニュートリノ / OPERA実験 / Appearance / 加速器 / CERN / 原子核乾板 / J-PARC |
Outline of Annual Research Achievements |
OPERA実験は、CERNの加速器SPSを用いて作ったミューニュートリノ(νμ)ビームを730km 離れたイタリア・グランサッソ研究所に照射し、タウニュートリノ(ντ)の出現の有無を調べ、ニュートリノ振動現象を最終検証する長基線加速器ニュートリノ振動実験である。
今年度は新たにタウニュートリノ反応事象を1例検出し、これまでの解析と合わせて計5例のタウニュートリノ反応事象の検出に成功した。この結果、検出した 5 例の事象をニュートリノ振動以外の既知の理由(背景事象)で説明できる確率は 1,000 万分の 1 しかなく、OPERAが目標としていた「ミューニュートリノからのタウニュートリノ出現」を信頼度5.1σ で"発見"した。この成果に繋がった本研究課題代表者の解析技術開発に対して、平成26年度 日本写真学会 進歩賞「原子核写真乾板における自動飛跡認識技術の高度化研究」が授与されている。 また、タウニュートリノ出現によるニュートリノ振動確率の測定結果を更新し、これらの成果をまとめた学術論文(Phys.Rev.Lett.115.121802)を公表した。今後は、引き続きバックグラウンド推定の精緻化研究を推進し、今年度中に結果をまとめ、タウニュートリノ出現による振動確率測定の精度向上を果たす。
また、本研究のために開発した原子核乾板解析技術を応用し、新たに提案した低エネルギーニュートリノ反応の詳細研究を目的とした実験計画(J-PARC T60実験)も推進した。水標的および鉄標的原子核乾板検出器をJ-PARCに設置し、ニュートリノビーム照射実験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OPERAの最大の目的であったタウニュートリノ出現によるニュートリノ振動の直接観測を5.1σという業界で"発見"と見なされるレベルで達成した。今後のニュートリノ振動確率の測定精度向上に欠かせない、ντ反応の主要な背景事象となるハドロン反応の詳細研究も順調に進んでおり、今年度中に結果をまとめる予定である。これらの結果は、国際会議 La Thuile 2016での招待講演 "Discovery of ντ Appearance and Recent Results from OPERA" (by Tsutomu Fukuda) を始め、国内外の様々な学会等で発表している。また、2015年度のノーベル賞「ニュートリノが質量持つことを示すニュートリノ振動現象の発見」のAdvanced Informationでもこの成果が引用されている。以上の成果に繋がったOPERA実験の学術論文(Prog.Theor.Exp.Phys.2014,101C01)に対して第21回 日本物理学会 論文賞が授与された。
また、本研究を進める中で開発した新規技術の応用研究として原子核乾板を主検出器とする新しいニュートリノ実験プロジェクトを本研究者が実験代表者として立ち上げ、実際にJ-PARCにてニュートリノビーム照射実験を行っている。その結果、原子核乾板を用いたニュートリノ-水反応の検出(世界初)、T2K実験の前置検出器INGRIDとのハイブリッド解析によるミュー粒子同定等の結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中のハドロン反応の詳細解析を推進し、タウニュートリノ反応の選別条件を広げた新しいセレクションにおける高精度なバックグラウンド推定を行う。その結果を元に新しいセレクションによるニュートリノ振動確率の測定を行う。
また、新たに提案した低エネルギーニュートリノ反応の詳細研究は将来のニュートリノ研究にとって重要な知見をもたらし得る為、精力的に推進する。
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Causes of Carryover |
購入予定であったデータストレージ用のハードディスクの購入を見合わせたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データストレージ用のハードディスク・追加スキャンのためのシリコーンオイルを購入する。また、データ処理の並列化による時間短縮のための解析用PCの購入を検討している。その他、研究打ち合わせや成果発表のための旅費として使用する。
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