2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25707032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
徳永 祐介 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (50613387)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マルチフェロイックス / 電気磁気効果 / 電場磁化制御 / 低消費電力デバイス / 磁気記録 |
Research Abstract |
本年度は、早い電場掃引に対しては電気分極反転に際して磁化が反転する強誘電強磁性体Dy0.7Tb0.3FeO3について、磁場中での強誘電履歴曲線の周波数依存性を詳細に調べることで、電場掃引が早い場合には磁場印加に伴い、強誘電履歴曲線が電場軸方向へと変位するという、新奇な現象を見出した。その変位の大きさは磁場の大きさに比例し、またその符号は磁場の符号を反転したり、あるいは電気分極と磁化の結合の符号を変えたりすることで反転できる。加えてこの現象が、電気分極と磁化の方向が強く結合している場合には、磁場中では正負の分極状態の間にゼーマン項によるエネルギー差が生じることに起因しており、電気分極と磁化の符号が結合した系に特有であることを突き止めた。強磁性履歴曲線の磁場軸方向への変位はしばしば強磁性/反強磁性二層膜で観察されており、磁気トンネル接合などへ応用されているよく知られた現象であるが、強誘電履歴曲線の電場軸方向への変化はほとんど報告がない。今回見出された現象は、電気分極と磁気モーメントの符号が結合した系においてはごく一般的に起こることが期待され、なおかつ強誘電履歴曲線の電場軸方向への変位量や符号を磁場で自在に制御できることから、新しい応用への道が見つかる可能性がある。この現象はまた単磁区状態から出発して、強磁性磁壁を電場により核生成・駆動するための閾値電場を、磁場により制御したことに相当しており、強磁性強誘電体における磁壁の電場駆動に関しても新たな知見を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電場で磁壁を駆動するための候補物質の良質単結晶の合成は比較的順調に進んでいるが、25年度中に完成するはずだった低温・電場印加下で磁壁をその場観察するための実験系の構築が遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き電場で磁壁を駆動できる可能性を持つ材料の単結晶合成を進めるとともに、磁壁を低温でその場観察するための実験系を速やかに構築し、電場による磁壁およびマルチフェロイックドメイン壁の電場駆動とその場観察を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2台購入予定だった1500℃電気炉を設置スペースなどの問題から本年度は1台しか購入しなかった。また、Heフロークライオスタットの業者選定を見直し、購入価格が予定より安くなった。さらに、フラックス法による合成を検討していた試料のいくつかが浮遊帯溶融法により合成できたため、当初購入予定だった複数個のプラチナるつぼを今年度は購入しなかった。加えて、低温で磁壁のその場観察を行うための実験系構築が遅れたことから、当初購入予定だった電磁石マグネット電源やHeフロークライオスタットの支持台などを本年度は購入しなかったなどしたため。 平成25年度に購入したフロー型クライオスタットの支持台、試料に磁場を印加するための電磁石の電源、電気磁気効果の測定に用いるマルチファンクションプローブ、電源アンプの購入など比較的高額な物品をはじめとして、研究遂行に必要な試薬や消耗品の購入、また国内および海外の学会に参加し、成果を公表するのに必要な旅費などに充てる。
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