2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25707033
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 一将 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50622304)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 統計物理学 / 非平衡・非線形物理学 / 数理物理学 / 臨界現象 / 液晶 / 乱流 / 界面成長 / 相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、所属研究室の学生と協力し、(1)イジング対称性を付加した吸収状態転移、(2)曲率制御した初期条件のもとでの界面成長ゆらぎ測定、(3)KPZ普遍クラスの特異な時間相関解析を中心に取り組んだ。 (1)については、対称性の精度向上のための液晶配向技術の開発検証を行った。具体的には、感光性高分子膜と偏光紫外線を用いた配向技術を様々な条件で施行して、対称性の精度や電気対流への影響を評価した結果、本手法の配向強度では、二種のツイスト配向間に明瞭な界面が得られないことが判明した。そこで代替手法として酸化ケイ素の蒸着法の導入と検証を行った。 (2)については、界面の初期条件を任意に成形できる光学系の構築を行った。具体的には、液晶乱流の核生成に用いるレーザービームの経路上に空間位相変調器を配置して、乱流生成に必要なレーザー強度の調整や、生じる液晶乱流領域の形状評価を行った。また、温度制御装置の作製も行った。さらに、実験計測を予定している状況での数値計算も行い、時間相関やクロスオーバー等について数値的な予見を得た。 (3)については、ブラジルのグループと共同研究を行い、基板サイズが膨張する場合の界面成長数値計算を行ったところ、一見平面状の界面であっても円形界面のような挙動を示すことを発見した。本成果は、これまで曲率の有無に起因すると思われていた円形界面と平面界面の違いが、実は基板サイズの膨張の有無にあることを示唆する非自明な結果であり、論文出版を行った。また、研究代表者は慶応大学の秋元琢磨氏と協力して、界面ゆらぎの時間相関の特異性を弱いエルゴード性の破れの観点から解析した。結果、円形界面の時間相関の一部性質が、更新過程と呼ばれる単純な模型で定量的に再現できることを発見した。これは、界面ゆらぎの特異な時間相関がシンプルな理論で理解できる可能性を示唆する画期的な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部計画に変更が生じたが、研究計画時点で想定していた範囲内であり、その場合の対策として練られていた計画に従って順調に研究を推進した。その他、当該年度冒頭に掲げた実験目標は概ね達成でき、界面成長を中心として、研究計画で目標とした様々な測定を今年度実施する準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、研究代表者は東京工業大学に異動となり、新たに研究室を立ち上げた。従って、まずは各種実験に必要な設備を極力早く整える。そのうえで、研究室配属の学生と協力して使用可能となった設備で行える研究から随時再開していくことで、前年度に引き続いて、上記(1)-(3)の課題を遂行する。 (1)については、酸化ケイ素による液晶配向技術の条件検討をさらに進め、対称性精度と電気対流への影響を評価する。精度の高い液晶セルを作成して、吸収状態転移の様相を観察することで、旧来の配向技術と比較したイジング対称性の精度向上の度合いを確かめる。これにより実験条件を確定させたうえで、臨界現象の精密測定を行う。臨界現象の実験結果は、理論的に期待されるvoter普遍クラスの挙動と比較し、共通点と相違点を明らかにする。 (2)については、前年度に完成させた光学系を用いて、曲率を任意に制御した初期条件のもとでの界面成長ゆらぎの測定を本格的に行う。そして、結果を前年度に得た数値計算の結果や、既に得られている円形界面や平面界面の場合の実験結果と比較して、共通点と相違点を明らかにすると共に、Kardar-Parisi-Zhang(KPZ)普遍クラスにおける時間相関やクロスオーバーなどの性質を決定する。 (3)については、引き続き慶応大学の秋元琢磨氏と協力して、界面ゆらぎにおける弱いエルゴード性の破れをシミュレーションでも計測することで、現在得られている実験結果の普遍性について検証する。これが完成し次第、早期に論文投稿を行う。 以上の研究計画と並行して、得られた実験結果について国内外の理論家と議論・提携して理論的仕組みの理解を目指す。また、本年度は本研究課題の最終年度であるので、完成した研究成果から随時、論文投稿や国内外の研究会で成果発表を行う。
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Causes of Carryover |
本年度・次年度で所属大学が変わるため、効率的な研究遂行を目的として一部装置等の購入を次年度に変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の所属大学で運営する新規研究室において、本研究計画の実験を行うために必要な機材を購入する。
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Research Products
(14 results)
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[Presentation] 液晶の「量子渦」と乱流2014
Author(s)
竹内一将
Organizer
日本物理学会 2014 秋季大会
Place of Presentation
中部大学(愛知県春日井市)
Year and Date
2014-09-09 – 2014-09-09
Invited
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