2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25707038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
渋谷 岳造 独立行政法人海洋研究開発機構, システム地球ラボ, 研究員 (00512906)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地球史 / 流体包有物 / 大気 / 海水 / 二酸化炭素 |
Research Abstract |
20億年前以前、太陽輝度は現在の約80%以下であり、地球大気組成が現在と同じだと仮定すると地球表層は凍り付くほど寒冷であったと予想されている。しかし、地質記録は38億年前から液体の海洋が存在していたことを示している。この矛盾(暗い太陽のパラドックス)を解消するために、初期大気は温室効果ガスであるCO2に富んでいたとする仮説が数値計算から提唱されている。本研究ではこの仮説を検証するために海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英中の流体包有物組成(CO2濃度、Ar同位体比、炭素同位体比)に基づき定量的に『大気海洋CO2濃度変動』を解読し、この仮説を検証することを目的としている。平成25年度はこれまでに収集してきた世界12地域9つの年代(35、32、29、28、27、26、22、5、0.05億年前)の熱水性石英試料約1000個について岩石学的記載を行った。その結果、35、32、22億年前の試料の保存状態が良く分析に適していることが明らかになった。尚、真空ラインの改良を行い、35億年前と22億年前の試料について分析を行った。分析は初生的流体包有物を多く含む試料から二次的流体包有物を多く含む試料について系統的に行った。その結果、35億年前の初生的流体包有物はアルゴン同位体比が低くCO2に富むことが明らかになり、一方、22億年前の試料については初生的流体包有物はCO2濃度が低いことが明らかになった。これは太古代初期では海水CO2濃度が高く22億年前はCO2濃度が相対的に低いことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英中の流体包有物組成(CO2濃度、Ar同位体比、炭素同位体比)から大気海洋CO2濃度変動を解読することである。この目的を達成するために、初年度(平成25年度)はこれまでに収集してきた世界12地域9つの年代(35、32、29、28、27、26、22、5、0.05億年前)の熱水性石英試料約1000個について薄片を作成し岩石学的記載を行い、石英の保存状態の良し悪しを判断し、分析の地域的優先順位を決定することが目的であった。平成25年度は流体包有物の産状などの記載はほぼ終了し分析の優先順位を決定することができた。当初の予定より早めに分析の優先順位を決定することができたので、予定を繰り上げて35億年前と22億年前の試料の分析を行い、太古代初期と原生代前期の海水CO2濃度について制約を与えた。一方、熱水性石英試料の薄片観察から、流体包有物のサイズが非常に小さい試料が多くあることが明らかになり、流体包有物の均質化温度と氷点温度測定には当初の予定より多くの時間を要することがわかった。このため均質化温度、氷点温度測定は未だ完了していない。また、分析中に真空ラインの一部が故障したため当初予定していた真空ラインの改良、増設については一部行ったものの完了することができなかった。計画全体としては当初の予定より進んでいるものと遅れているものがあり、進捗状況は「おおむね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に行う予定であった分析は一部予定を繰り上げて平成25年度に行うことができたため、平成26年度以降は当初の予定より遅れている部分(流体包有物の均質化温度、氷点温度測定)について精力的に進めていく。これにより、岩石学的記載が完了し、得られたデータの解釈について詳細な議論が可能になる。また、分析の精度を向上させるために真空ラインの改良、増設を行っていく。さらに、予定を繰り上げて分析を行った35億年前と22億年前の試料以外にも保存状態の良い32億年前の試料について2地域の試料について分析を行っていく。これにより同時代の試料から見積もられる海水CO2濃度が地域的なものなのか全球的なものなのかを判断する。随時論文としてまとめ投稿していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は分析用の真空ラインの改良、増設を行う予定であったが、予定を繰り上げて行った試料分析中に発生したポンプやバルブの故障により真空ラインの修理を主に行った。このため増設については次年度に繰り越すことになった。平成26年度は22億年前の試料などCO2濃度の非常に低い試料についても分析の精度を向上させるために導入試料を増やすべく真空破砕容器を大きくする。さらに真空ラインのCO2とH2O量を測定する部分の改良を行う。特に導入試料を増やすとCO2量の測定精度は向上するもののH2O量が多すぎて測定できないという問題が生じるため、H2O量測定部のラインの体積を拡大させH2O量測定上限を上げる。 平成25年度に行うことのできなかった真空ラインの改良、増設を行うために次年度使用額を一部使用する。また、平成25年度に行った岩石学的観察から流体包有物の個々のサイズが非常に小さいものが多く、流体包有物の均質化温度、氷点温度測定が予定より多く時間を要することが明らかになったため、平成26年度はポスドクを雇用し、これらの測定を精力的に進める予定である。
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[Journal Article] Reactions between basalt and CO2-rich seawater at 250 and 350 °C, 500 bars: implications for the CO2 sequestration into the modern oceanic crust and the composition of hydrothermal vent fluid in the CO2-rich early ocean2013
Author(s)
Shibuya, T., Yoshizaki, M., Masaki, Y., Suzuki, K., Takai, K., Russell, M. J.
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Journal Title
Chemical Geology
Volume: 359
Pages: 1;9
Peer Reviewed
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[Journal Article] Decrease of seawater CO2 concentration in the Late Archean: An implication from 2.6 Ga seafloor hydrothermal alteration2013
Author(s)
Shibuya, T., Tahata, M., Ueno, Y., Komiya, T., Takai, K., Yoshida, N., Maruyama, S., Russell, M.J.
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Journal Title
Precambrian Research
Volume: 236
Pages: 59;64
Peer Reviewed
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[Journal Article] Post-drilling changes in fluid discharge pattern, mineral deposition, and fluid chemistry in the Iheya North hydrothermal field, Okinawa Trough2013
Author(s)
Kawagucci, S., Miyazaki, J., Nakajima, R., Nozaki, T., Takaya, Y., Kato, Y., Shibuya, T., Konno, U., Nakaguchi, Y., Hatada, K., Hirayama, H., Fujikura, K., Furushima, Y., Yamamoto, H., Watsuji, T., Ishibashi, J., Takai, K.
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Journal Title
Geochemistry, Geophysics, Geosystems
Volume: 14
Pages: 4774;4790
Peer Reviewed
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[Journal Article] Chemical composition and K–Ar age of Phengite from Barrovian metapelites, Loch Leven, Scotland2013
Author(s)
Aoki, K., Windley, B., Sato, K., Sawaki, Y., Kawai, T., Shibuya, T., Kumagai, H., Suzuki, K., Maruyama, S.
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Journal Title
The Journal of the Geological Society of Japan
Volume: 119
Pages: 437;442
Peer Reviewed
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[Journal Article] Petrogenesis of the ridge subduction-related granitoids from the Taitao Peninsula, Chile Triple Junction Area2013
Author(s)
Kon, Y., Komiya, T., Anma, R., Hirata, T., Shibuya, T., Yamamoto, S. and Maruyama, S.
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Journal Title
Geochemical Journal
Volume: 47
Pages: 167;183
Peer Reviewed
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[Journal Article] Nitrification-driven forms of nitrogen metabolism in microbial mat communities thriving along an ammonium-enriched subsurface geothermal stream2013
Author(s)
Nishizawa, M., Koba, K., Makabe, A., Yoshida, N., Kaneko, M., Hirao, S., Ishibashi, J., Yamanaka, T., Shibuya, T., Kikuchi, T., Hirai, M., Miyazaki, J., Nunoura, T., Takai, K.
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Journal Title
Geochimica et Cosmochimica Acta
Volume: 113
Pages: 152;173
Peer Reviewed
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[Journal Article] Elemental dissolution of basalts with ultra-pure water at 340 °C and 40MPa in a newly developed flow-type hydrothermal apparatus2013
Author(s)
Kato, S., Shibuya, T., Nakamura, K., Suzuki, K., Rejishkumar, V.J. and Yamagishi, A.
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Journal Title
Geochemical Journal
Volume: 47
Pages: 89;92
Peer Reviewed
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